あえて「利き手」を封印することが、キャリアの独自性を生む
――少し質問の方向性を変え、努力とキャリアの関係性を深掘りします。キャリアを重ねると「このままでいいのか」という停滞感、いわゆるキャリアの踊り場に直面する人も増えますよね。このタイミングではどのような努力が必要でしょうか。
荒木:なかなか難しい質問ですね。一つ言えることとして、壁にぶつかった時は、これまでと同じ努力を続けてはいけません。成功の方程式が見えている時はまっすぐ進めばいいのですが、停滞しているということは、今持っているアセットが通用しなくなっているということ。
そんな時は、あえて「利き手を封印」するんです。
――利き手を封印、ですか。
荒木:自分の得意技や手癖で解決しようとせず、全く違う領域にリソースを割いてみる。私も、ビジネススクールという論理と戦略のド真ん中から一度離れ、哲学やアート、あるいは一次産業といった領域に意識的に身を置いています。
そうやって全力で“キョロキョロ”して世界を広げることで、かつてのアセットと新しい視点が結びつき、キャリアの幹が一段と太くなる。停滞期は、自分をゼロリセットして新しい鉱脈を探しに行くための、絶好のタイミングでもあります。
――ここで「自分にとって一見ムダに思えることが価値を持つ」という冒頭の論点に戻ってきましたね。では、テクノロジーやビジネスのトレンドが著しく移り変わるこの世の中で、私たち人間に最後まで残された「価値のある努力」も、やはり非合理性を重んじるという……。
荒木:はい。結局同じ結論になってしまうのですが、非合理的な自分の欲求に正直になり続けることだと思います。
例えば、生成AIは過去の膨大なデータをもとに「最大公約数的な正解」を提示してくれます。でも、それはあくまで過去のサンプル数から導き出された正解であって、これからのあなたの成功や幸福を約束するものではありません。
世間一般的な正解ではなく、「なんかよく分からないけど、これをやりたい」という、説明のつかない衝動こそが、AIには代替できない領域であり、オリジナリティを形づくる。
――「よく分からないけどやりたい」を、大切にする。
荒木:ええ。そして、その非合理な一歩を踏み出す勇気を支えるのが、先ほどお話しした「過去のムダを回収してきた自分」への信頼です。誰もが賢くなろうとし、最短距離でのゴールを狙うこれからの時代において、自分の内なる声に従ってやりたいことをひた向きにやれること。それこそが、もしかすると最大のブルー・オーシャンなのかもしれません。
● 停滞期は得意技や手癖に頼らず、全く違う領域にリソースを割く
● 非合理な自分の欲求と向き合い続けると、独自性のあるキャリアが見えてくる
● 「過去のムダを回収してきた自分」を信じ、非合理な一歩を踏み出す
取材・編集:はてな編集部 制作:マイナビ転職


