2025年8月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。ビジネス部門の第3位は――。
▼第1位 だから現場を回るしかなかった…孤高の独裁者・鈴木修は自分のところに情報が届かなくなった事を知っていた
▼第2位 「あの噴水止めてください」1グラム、1円までこだわる鈴木修は本当に部品メーカーの噴水を止めた
▼第3位 だから日本人の「百貨店離れ」が進んでいる…三越伊勢丹HD元社長がルイ・ヴィトンを絶対に入れなかった理由
百貨店に庶民の居場所はもうない
立地でも、施設の良さでも、ファッション性でもない。「日本の百貨店改革は、組織と人で負ける」と元三越伊勢丹ホールディングス社長、大西洋さんはいう。
百貨店の衰退を、もうだれも疑わなくなった。「文化の創造・発信拠点」として全国各地で城下町を形成した往年の姿はもうない。過去10年のうちに閉店した主な地方百貨店は約50店に上る。1990年代初めに約10兆円あった業界売上高は30年間でほぼ半減した。
ここ数年の最高益は、吹けば飛びかねないインバウンド客によってもたらされたものだ。成功しているとされる都心の旗艦店でさえ、デパ地下の食品需要と囲い込んだ富裕層の両極によって、イメージが大きく膨らんでいるように見える。ファッション市場を牽引してきた庶民の憧れの的は、国民共有の「思い出」と化してしまうのか。
ヴィトンを入れないことが「伊勢丹のプライド」だった
昨年11月、高級ブランド「ルイ・ヴィトン」がついに、伊勢丹新宿本店に開業した。本店本館にヴィトンを「入れない方針」は、少なくとも2009~17年にトップを務めた大西さんと、その前任の武藤信一氏の代(2001~09年)には明確に貫いていた「伊勢丹のプライド」そのものだったという。
自主編集売り場の企画力、提案力を強みにし、顧客の買い回りを阻害しかねない海外ラグジュアリーブランドの拡大を抑え、主導権は譲らないという態度を表していた。売り場のテナント化が加速する百貨店業界にとって最後の牙城ともいえる象徴だったが、崩れた。百貨店はまた新たな転換期を迎えたことになる。
多角的な構造改革の必要性が叫ばれながら、実践を浸透させられず、求心力を失った。その要因はどこにあったのだろうか。かつて、改革の旗手として「ミスター百貨店」と称された大西さんに当時を振り返ってもらい、「失敗の本質」を探った。

