もし中国がTSMCの工場を狙ったら…
アメリカがこれほどまでに強硬な手段に出る背景には、中国の軍事的脅威と並んで、もう一つの悪夢のシナリオがあります。
それが台湾有事――すなわち、中国による台湾侵攻のリスクです。
ここまでお話したように、世界中の頭脳、すなわちiPhoneやNVIDIAのAIチップ、自動車の制御チップといった最先端半導体の製造は、その90%以上が、台湾のTSMC一社に集中しています。
もし、中国が台湾に侵攻し、TSMCの工場が破壊されたり、中国の支配下に置かれたりすれば、何が起きるでしょうか。
その瞬間、世界中のハイテク産業のサプライチェーンは寸断され、AppleはiPhoneの新製品を出荷できなくなり、トヨタやGMは自動車を生産できず、データセンターは増設できなくなり、世界経済は瞬時にして機能不全に陥ります。その被害額は、リーマンショックやコロナ禍の比ではありません。
この「台湾リスク」と中国への「技術的封じ込め」という二つの動機が組み合わさった結果、各国政府は「経済安全保障」の大号令のもと、半導体サプライチェーンの自国回帰、あるいは同盟国回帰へと、一斉に舵を切りました。


