※本稿は、村山秀太郎監修『2時間 de 資源史』(秀和システム新社)の一部を再編集したものです。
アメリカの窮地を救った「シェール革命」
2000年代、エネルギー市場の最大の関心事は「ピークオイル」でした。これは、「地球の(在来型)石油生産は、やがてピークを迎え、その後は減少の一途をたどる」という理論です。石油が枯渇すれば、人類の文明は立ち行かなくなるのではないか、と。
特に、世界最大の石油消費国でありながら、国内生産量が1970年をピークに減少し続けていたアメリカにとって、これは国家安全保障上の悪夢でした。中東の不安定な情勢に、自国の経済と軍事(そしてドルの運命)が人質に取られている状況が続いていたのです。
しかし、この悪夢を一夜にして(正確には10年ほどで)終わらせたのが、「シェール革命」と呼ばれる技術革新でした。
「シェール」とは、日本語で「頁岩」と呼ばれる、非常に硬く、緻密な岩石の層のことです。この岩盤の内部に、石油や天然ガスが閉じ込められていること自体は、昔から知られていました。しかし、それは、私たちが「油田」と聞いてイメージするような「地下の空間に溜まっている油」ではありません。
岩盤に閉じ込められた「宝」を取り出せるか
シェールオイルは、「硬いスポンジに染み込んだ油」のようなもので、岩が硬すぎて、従来の技術では商業的に取り出すことが不可能だったのです。この「不可能」を「可能」に変えたのが、二つの技術の組み合わせでした。
①水平掘削:従来の井戸が「下」に向かって垂直に掘るだけだったのに対し、この技術は、地下深くでドリルを90度曲げ、石油やガスを含む「薄いシェール層」に沿って、水平に数キロメートルも掘り進めることを可能にしました。
②水圧破砕法:水平に掘った井戸から、水、砂、化学薬品を混ぜた液体を「超高圧」で注入し、周囲の硬い岩盤(シェール層)に人工的に無数の「ヒビ」を入れます。このヒビを通じて、岩に閉じ込められていた石油やガスが井戸に流れ込むのです。

