アメリカが世界最大の原油生産国へ

この技術は、ジョージ・P・ミッチェルという、ギリシャ移民の息子である独立系石油開発者の執念によって、2000年代初頭にテキサス州でついに完成を見ます。

シェール革命をあらわしたイラスト
出所=『2時間 de 資源史

その効果は、劇的でした。2008年頃から、アメリカの原油生産量は、1970年以来初めて増加に転じ、そこからあり得ない角度の右肩上がりで急増します。

2018年、アメリカはついにサウジアラビアとロシアを抜き、世界最大の原油生産国へと返り咲きました。そして2020年には、石油製品の純輸入国(輸入が輸出を上回る)だったアメリカが、約70年ぶりに「純輸出国」へと転換したのです。これは、エネルギーの歴史における、そして世界の地政学における「巨大地震」でした。

「中東重視」の外交政策が一変した

アメリカは、もはや中東の石油に(少なくとも戦略的には)依存する必要がなくなったのです。これにより、アメリカの外交政策は大きく舵を切ります。

中東への過剰な関与を減らし、世界の警察官から徐々に手を引いていく(「世界の保安官」程度になる)一方で、そのリソースを、新たな最大のライバルと見なす中国への対策(「アジア・ピボット」)に振り向ける余裕が生まれました。

ドナルド・トランプ前大統領が、それまでタブーとされてきた「イラン核合意からの離脱」や「在イスラエル大使館のエルサレム移転」を強行できたのも、極論すれば「中東の産油国の顔色を、昔ほど伺う必要がなくなった」という、シェール革命による「エネルギー自立」が背景にあるのです。

しかし、このアメリカの「自立」は、これまで石油価格をコントロールしてきた「古い巨人たち」を、新たな戦いへと引きずり込むことになりました。