ロシアとサウジアラビアの危うい関係

その矛盾が爆発したのが、2020年3月。新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中の経済活動が停止し、石油需要が「蒸発」した時のことです。

OPECプラスは、価格暴落を防ぐため、緊急の追加減産を協議しました。しかし、ここでプーチンが「待った」をかけます。ロシアは、アメリカのシェール産業を今度こそ叩き潰すため、減産を拒否したのです。激怒したMbsは「(ロシアがやる気なら)サウジは、過去に例のないレベルで『大増産』する」と宣言。

たった一日で、原油価格は30%以上も暴落。世界市場はパニックに陥りました。

この未曾有の危機は、さすがにトランプ大統領の仲介でサウジとロシアが手打ち(史上最大の協調減産)をすることで収束しましたが、この一件は、OPECプラスという枠組みがいかに「Mbsとプーチン」という二人の指導者の個人的な関係と、アメリカのシェール産業への対抗意識の上で成り立っているかを世界に示しました。

石油輸入国にとって最大の「急所」

シェール革命によりアメリカは「エネルギー自立」を達成しました。しかし、これで「中東の石油」が重要でなくなったかというと、まったくそんなことはありません。なぜなら、アメリカは自立しても、アメリカの同盟国である日本、韓国、そしてヨーロッパ諸国は、依然として中東の石油に依存しきっているからです。

そして、世界最大の石油「輸入国」の座は、アメリカから「中国」に取って代わりました。中国もまた、その輸入の大半を中東に頼っています。

中東、特にペルシャ湾岸地域は、現在もアジアとヨーロッパの「生命線」であり続けています。そしてこの生命線には、たった一つの「急所(チョーク・ポイント)」が存在します。

それが、ペルシャ湾とインド洋(オマーン湾)を繫ぐ、幅わずか数十キロの狭い海峡、「ホルムズ海峡」です。

ホルムズ海峡のイラスト
出所=『2時間 de 資源史