半導体を握った国が勝利する時代へ
ファーウェイは、自社で設計はできても、製造は台湾のTSMCに100%依存していました。そして、そのTSMCは、製造装置の多くをアメリカの技術を使っていたのです。TSMCは、最大顧客の一つであったファーウェイからの受注を停止せざるを得ませんでした。
その結果、ファーウェイのスマートフォンの頭脳であった麒麟チップは在庫が尽き、ハイエンドスマホ事業は壊滅的な打撃を受け、世界シェアから一気に転落します。
この「ファーウェイ事件」こそ、現代のチップ戦争の開戦を告げる号砲でした。
それは、グローバリゼーションの終わりと、半導体の武器化を世界中に見せつけた瞬間でした。
トランプ政権が始めた戦争は、バイデン政権によって、さらに高度で、より冷徹な地政学的な封じ込め戦略へと引き継がれました。
彼らの戦略は、中国と全面戦争をするのではなく、中国がAIやスーパーコンピュータといった最先端技術を進化させるために絶対に欠かせない、ごくわずかなチョークポイント(窒息点)をピンポイントで締め上げることです。
オランダSML社の唯一無二の技術
そのチョークポイントとは、次の3つです。
①AIチップの禁輸
現代のAIの開発には、NVIDIAが設計するH100やA100といった超高性能なGPU(画像処理半導体)が不可欠です。アメリカ政府は2022年10月、これらの最先端AIチップの中国への輸出を厳格に禁止しました。
②製造装置の禁輸
中国が自国で最先端チップを製造しようとしても、そのための機械がなければ不可能です。
特に、最先端の回路を焼き付けるために不可欠な装置は、世界で唯一、オランダのASML社しか製造できません。
アメリカ政府は、オランダ政府と日本政府に強力に働きかけ、同盟国として足並みを揃えさせ、ASMLの装置はもちろん、東京エレクトロンなどの旧世代の装置に至るまで、中国への輸出を禁止させました。
③最先端チップの設計ソフトの規制
そもそもチップの設計図を描くためには、アメリカ企業が独占するEDA(自動電子設計)と呼ばれる特殊なソフトウェアが不可欠です。アメリカは、このEDAソフトの最先端版も中国に使わせないよう、規制をかけています。
これは、中国に対して(低性能な)自動車や家電用の半導体は作ってもよい。しかし、スーパーカーや戦闘機のエンジンを作ることは、金輪際許さないと宣言する、明確な技術的封じ込めです。

