わずかな心の向け方で、時間の質は変わる
機内でのサービスは、あらかじめ料金に含まれているものです。ですから、過度に気をつかう必要はありませんが、サービスを提供する側もまた人間です。
気持ちよく受け取ってくださる方には、こちらも自然と、よりよい時間をお届けしたいという気持ちになります。
サービスとは、単なる“提供する・受け取る”にとどまらず、そこに小さな感情のやり取りが重なっています。たとえば、「ありがとう」と一言添えるだけで、その場の空気はふっとやわらぎます。
そのやわらぎは、巡り巡って、自分自身の心地よさとして返ってくることも少なくありません。ほんのわずかな心の向け方で、同じ時間の質は変わっていくのです。
「シャンパンを浴びられたから」に救われた
あるフライトで、シャンパンを開けた瞬間、勢いよく中身が噴き出してしまったことがあります。上空では気圧の関係で、想像以上に勢いよく飛び出すことがあるのです。
あろうことか、その瞬間、天井に当たったシャンパンが雨のように降りかかり、近くにいらしたお客様にかかってしまいました。本来あってはならないミスでした。
とっさにお席に駆け寄り、何度もお詫びをしました。当然、お叱りを受けてもおかしくない状況です。するとそのお客様は、「大丈夫、大丈夫。シャンパンを浴びられたから」と、笑って受け止めてくださったのです。
そのひと言で、その場の空気は一変しました。申し訳なさでいっぱいだった私の気持ちも、その言葉に救われたのを今でも覚えています。
同じ出来事でも、どんな言葉を添えるかで、その意味はまったく違うものになります。
ほんの少しの心あたたまる振る舞いが、その人の印象や場の空気を大きく左右します。
それは特別な場面だけでなく、何気ない日常の中でも同じことが言えるのかもしれません。無意識に出る一言や態度が、信頼を遠ざけることもあれば、逆に人の心を温めることもあるのです。



