結晶性知能が使えれば現役でいられる

高齢になるといろんな能力は衰えるばかりだと思い込んでいる人が多いようですが、そんなことはありません。知能も生涯にわたって伸びるといわれています。

1960年代に心理学者のジョン・L・ホーンとその師レイモンド・キャッテルが提唱したところでは、知能は「流動性知能」と「結晶性知能」の二つに分類されます。流動性知能とは新しい環境に適応するために、新しい情報を得て処理し、操作するための知能で、その場その場の状況に対応したり、パズルの問題を解いたりするときに発揮されます。

一方、結晶性知能は個人が長年にわたって、経験や学習などを通じて獲得する知能で、言語能力や理解力、洞察力などはこちらに含まれるといわれています。知恵といってもいいでしょう。

ホーンとキャッテルによれば、流動性知能は10代後半から20代前半にピークを迎え、あとは低下の一途をたどります。しかし、結晶性知能はその後も上昇し続け、高齢になっても安定し、さらに伸びることもあるというのです。

だとすればITのような、流動性知能で対応すべき分野の企業で、高齢者が社長を務めるのは難しいかもしれません。しかし反対に、結晶性知能で対応すべき分野では、経営者は高齢のほうがいいかもしれません。

100歳を超えてから麻原彰晃の精神状態を評価

医者も同じで、とくに精神科医の仕事は結晶性知能が重要だといわれます。私自身も精神科医を選んだころ、「この仕事は一生できるから」といわれたものです。

『死ぬまで元気 88の読むサプリ』
和田秀樹『死ぬまで元気 88の読むサプリ』(新潮社)

実際、フロイトは83歳で死ぬ間際まで治療をしましたし、ユングも同様でした。私の留学先で全米一の精神病院の創設者カール・メニンガー先生も97歳で亡くなるまで現役でした。

2007年に亡くなった秋元波留夫医師は、100歳を超えてからオウム真理教の麻原彰晃教祖の精神状態を評価し、話題になりました。

たしかに精神科医は、たくさんの患者さんを診るほど、状況ごとに的確に対応できるようになります。医学の世界は日進月歩ですから、早めの引退が必要な分野もあるでしょうが、精神科医は結晶性知能が頼りで、高齢であることがマイナスになりません。

だから、十把一からげに「高齢だからダメだ」とする風潮には違和感を覚えます。

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