「軍事力での解決」を示すイスラエルの方針
いかに対応すべきか。この問題でのイスラエルの方針は明白だった。軍事力によるイラン核問題の「解決」である。
あるイスラエルの専門家は、状況をサッカーの試合にたとえていた。イラン・チームは大打撃を受けている。ハマスは軍事的に追い詰められているし、ヒズボラも壊滅的な打撃を受けた。しかも、シリアのアサド政権は崩壊した。ハマス、ヒズボラ、アサド政権という3人の選手が退場したわけだ。
しかもゴールキーパーとも言うべきイランの防空体制は2024年秋のイスラエル軍の空爆で無力化された。つまりキーパーは負傷している。今こそシュートを打ってゴールを決めるべきだ。つまりイランの核関連施設を軍事力で破壊すべきだ、というのがイスラエルの議論である。
だがトランプ政権は、その前に、とりあえずは外交を選択した。交渉による解決をめざしたわけだ。すでに紹介したように、トランプは、イランに核問題での交渉を提案した。交渉の期間を尋ねられたトランプは二カ月と答えている。
イランとの交渉を潰したトランプの変心
その後、三回の交渉の機会があった。ウィトコフとアラグチは、マスカットとローマで、いずれもオマーンの仲介で交渉した。その焦点として浮かび上がってきた問題点が、ウラン濃縮だ。
天然界で採掘されるウランは、そのままでは役に立たない。濃縮する必要がある。そして純度が、ある水準までくると、およそ3%ほどだろうか、原子力発電の燃料など平和利用に使える。
そして、純度が90%ほどになると原子爆弾の材料になる。ウラン濃縮という技術が、民生用にも軍事用にも使えるわけだ。交渉開始の段階でイランは60%までの濃縮を進めていた。このあたりの技術的な問題も紹介してきた通りだ。
交渉が始まった段階では、アメリカはイラン国内における低レベルでの濃縮を認める意向を示唆していた。オバマ政権が2015年の合意で認めたのと同様だ。しかしながら、その後、イラン国内での濃縮を全く認めないと立場を変えた。
なぜトランプが立場を変えたのかは明らかではない。しかし、イランがウラン濃縮技術を保持する限り、自国の安全は保障されないというイスラエルの強い働きかけが、功を奏したのだろう。
その決め手となったのは何か。論理の力でトランプを変心させたのか。あるいは資金提供者たちを通じた強い圧力なのか。はたまた想像されるのは、何らかのトランプの個人的な弱みを握ったイスラエルによる説得工作だったのだろうか。

