住宅ローンの金利が上昇している。大手銀行の中には、変動型の最優遇金利でも1%を超えるケースが出てきた。返済が始まっている場合、どのようなことに気をつけたらいいのか。ファイナンシャルプランナーの内田英子さんは「今後の金利上昇が怖いからと、安易に繰り上げ返済を進めてはいけない。手元の現金が激減し、むしろ家計が危機に陥りやすくなるケースもある」という――。
家の模型、コイン、上向きの矢印
写真=iStock.com/sommart
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繰り上げ返済、借り換えには「待った」

メガバンクの変動型の最優遇金利の平均が年1%を超えた、と話題になっています。今まで見えていなかったリスクが見えてきて、不安を感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

住宅金融支援機構の調査結果では、変動型の住宅ローン金利の見直しについて、お客さまからの照会が「増えている」「多少増えている」と回答した金融機関は約6割に上るそうです。国土交通省がリーフレットを作成し、これから住宅取得を検討する方に対し金利タイプの慎重な選択を促すという驚きの動きもありました。

もし今、金利上昇の対策として「繰り上げ返済」や「借り換え」を検討されているなら、ぜひ一度立ち止まってみてください。どちらも手元資金を大きく減らす可能性があります。不安だからといって家計全体を見ないまま動いてしまうと、逆効果になる場合があります。

先行きを見通しづらい今は、やみくもに大きく動くことは得策ではありません。長期的な家計の生存戦略の視点から見れば、「攻め」よりも「守り」を優先すべき時期です。

これからの暮らしを守ることを目的とするなら、まず着手すべきは自分にとって必要なことや順番を明確にするプロセスです。金利上昇に負けない家計防衛の準備をはじめましょう。

「首都圏在住・40代夫婦・共働き・子2人」でシミュレーション

金利上昇局面でまず多くの方が考えるのは、繰り上げ返済です。筆者も普段住宅ローンに関するご相談をお受けする中で、ご質問をいただくことが多いテーマです。

確かに、繰り上げ返済をすると住宅ローンの残高を前倒しで減らすことができるため、今後の利息負担を減らすことができます。しかし、家計の戦略として考えると、繰り上げ返済は「攻め」の策です。ご自身にとってプラスに活かすためには、マイナス面も含めた影響を理解しておくことが大切です。

シミュレーションをもとに、繰り上げ返済の具体的な損得を一緒に確認していきましょう(事例はこれまでの筆者の経験から、定型化し作成しています)。

【首都圏在住・Aさんファミリー(仮)のプロフィール】

40代前半
夫婦共働き、子ども2人(末子は今年小学校入学予定。長子は中学受験を検討中)

世帯年収 約1320万円(手取り1056万円)
年支出額 784万円
現在の金融資産額 約1500万円<預貯金700万円、株式投資信託800万円(時価)>

3年前に東京近郊でマンションを購入
頭金+諸費用約850万円を拠出し、残り約7650万円をペアローン(変動金利型、当初年金利0.6%、元利均等35年返済)で借り入れ
当初の毎月返済額は約20万2000円

以下の条件で2026年5月に500万円を一部繰り上げ返済した場合の、住宅ローンのシミュレーション結果は以下(図表1)のとおりです。(期間短縮型)

○前提条件○
・当初年金利は0.6%。2025年7月以降半年ごとに+0.25%上がり、2026年1月に年1.1%になったとする
・今後は適用金利が半年ごとに0.25%上がり、2年半後、2.35%まであがるとする

【図表1】首都圏在住・40代夫婦・共働き・子2人のシミュレーション
500万円の一部繰り上げに対して約498万円の利息軽減効果が見込め、完済時期も約3年前倒しできるが……。(図表=筆者作成)