ケタ違いの金持ちの「ブッ飛んだ趣味」
私の知っているアメリカ人の中でも、とくに変わったレジャーを楽しんでいるのがラディック氏である。楽器にくわしい方なら、ドラム・メーカーのラディックといえばすぐにおわかりになるはずだが、そこの社長で80歳になる老人である。
このラディック氏の楽しみは、やはり“音”である。それも、そんじょそこらの“音”ではない。大砲をブッ放すのが趣味なのだ。
ラディック氏の隣家の住人であるマイコラス氏は私の友人である。私がマイコラス氏の家を訪れたとき、ラディック氏の“変わった趣味”が話題になり、マイコラス氏がラディック氏の趣味である年代ものの大砲を借りてきてブッ放してみせてくれた。
古ぼけた大砲で、南北戦争に使われたというカノン砲である。私はたかをくくっていたが、いやその音のデカいのなんの。鼓膜が破れて胃袋がズシーンとするほど物凄い音なのである。あとでよくも腰が抜けなかったものだと思ったほどの轟音である。
毎日のようにドッカーン! ドッカーン!
ところが、ラディック氏、以前は毎日のように、ドッカーン! ドッカーン! と、やっていたのだという。たまりかねた付近の住人たちから、「ラディックの大砲をやめさせろ!」と怒鳴りこまれてからは、年間30発、4日に1発に制限されてしまったのだという。
ラディック老人の仕事は、1日中、ドラムのテストをすることである。仕事をはなれたときぐらい音を忘れればいいのに、と思うのはシロウト考えで、このデッカイ大砲の轟音を聞くのが、ラディック老人の趣味とレジャーを兼ねた精神安定法なのだという。
このラディック老のレジャーには、近所迷惑というマイナスがあるが、レジャーとは本来、個人個人にとって違うものであるべきなのだ。
他人と同じレジャーを楽しんでいるようでは、やはりその相手と同様な収入に甘んじなければならないだろう。ひとよりもうんと儲けたいならば個性的なレジャーを発見し、王侯の楽しみをひとりだけ味わうことである。



