「ほぼ全資産」を定期預金に投じた老夫婦
今の現役世代は「定期預金」と聞いても、儲かるイメージは抱かないだろう。しかし、ひと昔の世代は、いまだに「かなり儲かる貯蓄方法」と思っている人が多い。なぜかといえば、昔は金利がかなり高かったからだ。
バブル期には、年7%を超えていたのだ。それゆえ彼らの多くは、今も何となく定期預金に多額のお金を預けている。岩手県一関市の山間部に住む老夫婦も、そうであった。質素な暮らしを続けていた夫婦には、およそ3000万円の預貯金があった。
そのほぼ全額を、満期が来ても自動継続になる定期預金に預けていた。そんな夫婦がともに認知症を患ってしまう。2人の世話を担ったのは一人娘だった。娘は都内在住で、当初は月に数回、週末に帰って2人の世話をしていたが、認知症が進行すると、会社を辞め、両親とともに暮らし始めた。
親の年金と女性の貯金を切り崩しながら両親の介護をしていたが、その生活が続く中で「このままだと貯金はなくなる」という不安が大きくなっていく。両親は自営業で年金も安かった。
親の通帳と印鑑があってもお金を下ろせない
5年が経過すると、両親の認知症の病状は進み、母親は特別養護老人ホームに入ることになった。所得が低いため、負担限度額認定が受けられたが、それでも月額6万円程度の出費となった。一方、父親は過剰な人見知りということもあり、女性は自宅での介護を続けることにした。
この頃にはアルバイトを始めていたが、介護との両立には週3日が精一杯で、苦しい生活が続いた。
そこで女性は「本当にどうしようもないときまで使わない」と決めていた、親の定期預金を解約することに決めた。女性が通帳やハンコを持って金融機関に行き、受付で「親の定期預金を解約したい」と伝えると、「契約者ご本人様が来られるか、ご本人様直筆の委任状が必要になります」と言われる。
「でも父は認知症で、もう文字も書けないんです」そう答えると、金融機関の担当者は「だとしたら、解約は難しいです。でも、成年後見制度を使えば解約は可能です」と言った。

