※本稿は、永峰英太郎『人はこんなことで破産してしまうのか!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
定年後の夫婦を襲う離婚のリアル
「人口動態統計」(厚生労働省)によると、同居期間20年以上の夫婦の「熟年離婚」の離婚数全体に占める割合は、2023年で23.5%と、過去最高となっている。ちなみに、1980年は7.7%である。昨今の熟年離婚の多さが実感できるだろう。
熟年離婚が増えている大きな要因は、平均寿命が延びている中、定年後の夫婦での生活が長くなり、価値観の違いや生活スタイルの不一致が顕在化することが挙げられる。さらに離婚というものが「普通のこと」となり、後ろめたさを感じる人が少なくなったことも大きい。
また、共働き世帯の増加や年金分割制度の導入により、女性が経済的に自立しやすくなった側面もある。年金分割制度とは、離婚した際に「夫婦で築いた厚生年金の報酬比例部分」を分割できる制度で、2007年4月に導入された。
この制度が、熟年離婚が増えた一因ともいわれている。熟年離婚は、女性から切り出すケースが多い。三重県に住む59歳の女性もそうであった。自ら夫に「離婚したい」と伝えた。
「夫の介護はしたくない」
この女性の場合、50代前半に結婚したが、5年間一緒に暮らして、どうしても価値観の違いを解消できなかった。しかし、お金のことを考えると、離婚を切り出すことができなかった。熟年離婚は老後が迫っている中でするため、経済力や貯蓄が十分でないと難しい。
しかし、女性は、年金分割制度の導入により「何とかなる」と離婚を決意したのであった。じつはこの女性の場合、離婚の理由として、夫の介護をしたくない気持ちも強かった。夫とは同い年であったが、最近では夫の体力が目に見えて衰え、近い将来自分が夫を支える可能性もあると感じていたのだ。
それだけはごめんだ――。夫には一切の非がない。それだけに夫は「この家は僕が買ったわけだし、僕が住むよ。そして今後、資金援助はしない」と言った。「わかった」と、女性は答えた。
離婚の手続きが終わり、一段落すると、女性は年金分割制度の説明を受けに年金事務所に出向いた。そこで、こう説明された。

