「国歌歌唱は政治的行為に当たらない」
自衛隊の政治的中立性への疑念を、政府のスポークスマンとして早期に払拭する狙いがあったのだろう。
陸上自衛隊中央音楽隊に所属する自衛官が4月12日の自民党大会で国歌を歌唱して物議を醸した問題で、木原稔官房長官が15日の衆院内閣委員会で「法律に違反することと、政治的に誤解を招くことは、別問題だ。しっかりと反省すべきものだ」と述べ、事態の収拾を図っている。責任の所在をあいまいにしながら、このまま幕を引いていいのか。
木原氏の発言は、自衛隊員の政治的行為を制限している自衛隊法に違反するのではないか、という野党やメディアなどの批判に対し、高市早苗首相(党総裁)や木原氏自身、小泉進次郎防衛相が「国歌歌唱は政治的行為に当たらない」「自衛隊法違反にも当たらない」と抗弁してきた姿勢を軌道修正したものだ。
木原氏は「法的問題はなくても、(防衛省の)政務三役や官房長、事務次官まで上がっていれば、別の判断があった」と断じ、防衛省内の情報管理体制に問題があったと結論付けた。責任追及の矛先を、党大会の運営主体だった高市総裁や鈴木俊一幹事長らではなく、小泉防衛相や大和太郎防衛次官らに向けたことにほかならない。
だが、自衛官は国家公務員だ。高市首相や鈴木氏らが国家公務員法で定める政治的行為の制限を知らないはずがなく、制服を着用した自衛官を党大会に登場させた事実が、不問に付される道理がないではないか。まして首相は自衛隊の最高指揮官なのである。
背景にあるのは「今の政治家は、政治と軍(自衛隊)の関係や距離感が分からない。防衛政策に携わったことがある国会議員からも『何で歌うのが悪いのか』と言ってくる」(防衛省筋)という現状で、この関係の再確立も急がねばならないのかも知れない。
「凛とした君が代が大会場に沁み渡った」
立党70年を迎え、都内のホテルで開かれた12日の自民党大会は、衆院選圧勝の高揚感が残る中、高市首相が憲法改正の実現に向け、「発議のめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と衆参両院の憲法審査会での議論を加速させるべきだとの考えを明らかにしたほか、安定的な皇位継承策として、皇室典範改正に向けた与野党の議論を主導する考えを示すなど、「高市カラー」に彩られた。

