ゲスト出演した歌手の世良公則氏が自身のヒット曲「燃えろいい女」を熱唱し、サビの歌詞を「燃えろサナエ」と変えて歌い、首相が立ち上がって歓声に応える場面もあった。
だが、国会での議論やSNSで話題をさらったのは、党大会の冒頭、陸自中央音楽隊の鶫真衣(つぐみ・まい)3等陸曹が制服姿でステージに上がり、会場にいた党国会議員らの国歌斉唱をリードしたことだった。
鶫氏は音大出身で、2014年に声楽要員として入隊し、22年から中央音楽隊に配属されている。アルバムやCDも出し、プロ野球開幕戦での国歌独唱に登場するなど、“自衛隊の歌姫”として幅広く活動している。
党大会では、司会者の平沼正二郎衆院議員(党青年局長)から「現役自衛官兼ソプラノ歌手」と紹介され、美声を披露した。
小泉防衛相は、党大会終了直後、鶫氏と握手する2ショットの写真をXに投稿し、「全国から党員らが結集する自民党にとって重要な場で国歌斉唱の大役を担ってくれたのが、陸上自衛隊の鶫真衣さん。凛とした君が代が大会場に沁み渡った。鶫さんをはじめ自衛隊の音楽隊を誇りに思う」と謝意を表わした。
この時点では疑問を感じなかったのだろう。
「企画会社から、個人にお願いをした」
自衛隊法61条(政治的行為の制限)に「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、(中略)これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない」とある。
野党やSNSからは、政治的中立性の観点から自衛隊法に抵触するのではないか、との批判が噴出したのは、当然だった。
そもそも、国家公務員法102条(政治的行為の制限)に「職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」とある。
仮に自衛隊法を知らなくても、この規定を知らない国会議員はいないだろう。国家公務員の政治的行為の制限は、私人か公人か、勤務時間内か外かの区別を問わない。これも規則に明記されている。
だが、鈴木幹事長は13日の記者会見で「党大会を企画する会社から、個人に対してお願いをした」「君が代自体は政治的な意味はないから、斉唱は特に問題がないと聞いている」と、政治的行為には該当しないとの考えを示し、組織防衛に走った。個人の判断で行動できるはずのない自衛官に責任を転嫁したのだ。
何が問われているのか、という本質的なところが分っていないのではないか。国歌を歌唱する行為が問われているのではなく、党大会という政党のイベントに自衛官がどういう立場で来たのか、が問われているのである。

