自民党内では、憲法に自衛隊を明記する改正案をめぐる論議などを通じ、自衛隊への「身内」意識や親近感が無自覚に湧いているという。自衛隊法などが要請する、政治勢力からの中立を軽視する傾向にあるのではないか。
木原氏も23年の防衛相当時、衆院長崎4区補選の応援に入り、「(自民党候補を)しっかり応援していただくことが自衛隊とその家族の労苦に報いることになる」と訴え、政治利用だとの批判を受けて、発言を撤回した過去がある。
「そのまま報告を聞いていた」
防衛省では、荒井正芳陸上幕僚長が14日の記者会見で、こう経緯を明らかにした。
「出演依頼を受けた当該自衛官から所属部隊を通じて、陸上幕僚監部、内部部局の担当部署に対し、私的に歌唱することについて、事前に相談があった。そのうえで、自衛隊法に定める政治的行為に当たるものではないと確認した旨の報告を(3日に)受けている」「自衛隊法に違反するものではなく、不適切だったとは考えていない」「(制服着用は)私人としての行為で、私の指示ではない。法令上、職務外において演奏服装の着用が禁止されているわけではない」
事前に組織内で協議され、党大会への出席は自衛隊法違反ではないとのお墨付きを与えていただけでなく、荒井陸幕長は「そのまま報告を聞いていた」と言うのである。
記者から「隊員は対価を受け取ったか。受けていなければ、イベント会社に役務を提供したことになる」と聞かれても、荒井氏は「謝礼は受け取っていないと承知している」と述べるにとどまった。
荒井氏の対応には内部からも疑問の声が上がる。防衛省幹部の一人は「国歌を歌うこと以前に、政党のイベントに政府の人間が出るのは休暇中だとしてもおかしい、という判断があってしかるべきだった。チェックが甘かった。陸幕長にまで報告が上がっていながら、なぜ気が付かなかったのか」と悔やんだ。
「良識ある方なら波風を立てなかった」
野党は批判を強める。国民民主党の玉木雄一郎代表は、14日の記者会見で「指揮命令系統がしっかりした自衛隊の一員として、仮に出るにしても、何らかの決裁を取った上で出ているはずだから、その意思決定も問われる」と述べ、防衛省を追及する構えを示した。
自民党に対しては「違法かどうかということ以前に、最大の我が国の実力組織の自衛隊の現職の方が仮に私人といっても、制服を着て、官職を紹介されることが、どういう政治的なインプリケーション(含意)を内外にもたらすか、かつての自民党の良識ある方なら、気付くし、諌めるし、無用な波風を立てなかったと思う」と、疑問を呈した。
同じ国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、14日の参院外交防衛委員会で「シビリアンコントロール(文民統制)の中で、自衛官は活動している。現場では部下は上官には逆らえないし、自衛官や防衛省職員は政治家に文句は言えない。自民党の幹事長は『個人に依頼し、個人が受けて、個人の問題だ』と。これでは、彼女がかわいそうだ。この3等陸曹は、まったく悪くない。自民党がおっちょこちょいだった。政治家が悪かった(という話)ですよ」と指摘した。いずれも的を射た見解だろう。

