宮内庁の新旧長官の“苦言”
ここで注目したいのは、宮内庁の長官の交代にあたっての新旧長官の発言だ(令和7年[2025年]12月25日)。2人はそろって、安定的な皇位継承や皇族数減少への対応をめぐる国会での合意形成が滞っている政治の現状に対して、率直に苦言を呈した。
西村泰彦・前長官の発言の中で、とくに目を向けておきたいのは次の箇所だ。
「多くの国民が受け入れてくれる、多くの国民が支持してくれる、そうした案を是非、作っていただきたい」
かなり踏み込んだ発言だ。ここで「多くの国民が受け入れてくれる、多くの国民が支持してくれる、そうした案」と述べているのは見逃せない。
政府は皇族数の減少対策として、2つのプランを提案している。
①敬宮殿下をはじめとする未婚の女性皇族が婚姻後も皇族の身分にとどまられることを可能にする皇室典範の改正と、②天皇からの男系血縁が遠く、被占領下に皇籍離脱を余儀なくされたいわゆる旧宮家系の、具体的には賀陽家・久邇家・東久邇家・竹田家の4家の子孫男性を、養子縁組という法的な手続きだけで新しく皇族にする制度だ。
しかし、②は昨日まで誰も知らなかった民間の男性が、女性皇族との心情的・生命的な結合であるご婚姻も介さずに、いきなり皇族になるという乱暴なプランだ。はたして「多くの国民が受け入れてくれる」かどうか。かなり疑問ではあるまいか。
そう考えると、宮内庁としてはおもに①プランの速やかな実現を望んでいることが伝わる。
「安定的な皇位継承」という課題
黒田武一郎・現長官の発言からは次の部分を紹介する。
この発言で要注意なのは、皇室が直面している課題について、(1)安定的な皇位継承と(2)皇族数の減少への対策という“2つ”があることを、明確に指摘していることだ。というのは、政府が提案している先の①②のプランは、もっぱら(2)についての“目先だけ”の手当てにとどまっているからだ。
それに対して皇室をお支えすべき職責を負う宮内庁は、より重要かつ根本的な課題として(1)安定的な皇位継承というテーマから目をそらしていないことが分かる。
将来的にこのテーマを解決するためには、側室不在の一夫一婦制なのに男系男子限定というミスマッチを解消して、「女性天皇」「女系天皇」を可能にする皇室典範の改正が不可避となる。
