スマイルカーブが示す生存戦略
外部環境が刻一刻と変化するなか、いまの自分の仕事が将来的にも価値を持つとあなたは自信を持っていえるだろうか。その問いを考えるヒントとなるのが「スマイルカーブ」という概念だ。
スマイルカーブとは、1990年代に台湾の大手パソコンメーカー「エイサー(Acer)」の創業者、スタン・シー氏が提唱したモデルだ。もとは製造業のバリューチェーン(価値連鎖)において、どの工程に最も付加価値が集中するかを図示したものだ。
アルファベットの「U」字型の曲線を描くスマイルカーブは、両端に価値が集中し、中央は価値が低いという構造を示した。
製造業版スマイルカーブ
・ 右端(価値が高い):ブランド構築・マーケティング・サービス提供
・ 中央(価値が低い):製造・組み立て・単純オペレーション
・ 左端(価値が高い):研究開発・設計・企画
つまり、製造や組み立て、単純オペレーションといった作業領域は付加価値が低く、代替されやすい。一方で、研究開発・設計・企画などで発揮される「新しいものを生み出す力」や、ブランド構築・マーケティング・サービス提供などで活かされる「ブランドを育てる力」には大きな価値が集まるというわけだ。
高度経営人材は需要があり希少
重要なのは、スマイルカーブの概念は個人のキャリアにも応用できることだ。ここでは製造業版から視点を変えて、「キャリア版スマイルカーブ」として考えたい。
いま、世界の労働市場では、どの領域で仕事をしているかによって給与水準が二極化している。その現実を最も直感的に示すのがスマイルカーブである。縦軸を「給与レベル」、横軸を「仕事の性質」とする(図表1)。
キャリア版スマイルカーブ
・ 右端(価値が高い):グローバル高度経営人材による知的・創造的・対人影響的業務
・ 中央(価値が低い):定型的な事務・調整業務
・ 左端(価値が高い):現場でおこなわれる物理的・対人的業務
代替可能性は中央で最も高く、両端ほど低くなる。
カーブの右端には、グローバル市場でも通用する高度経営人材がいる。
高度な構想力、複数分野を統合する判断力、異文化間の橋渡しをするコミュニケーション力と対人影響力、AIやデジタルツールを使いこなす柔軟性、これらを備えた人は単なるスキルの保有者ではなく、変化そのものを成果に変えることができる。
高度経営人材は需要があり希少なので、市場価値は非常に高く、給与水準も右肩上がりである。

