昭和型ホワイトカラーは淘汰される

左端には、エッセンシャルワーカーとその現場を率いるリーダー職がいる。介護や医療、保育、建設、物流、インフラ保守など、人と接することや物理的作業が不可欠な職種は、AIや遠隔オペレーションでは完全には代替できない。

さらに、そこで働く人々のモチベーションを高め、離職を防ぎ、現場をまとめ、サービスの質を維持・向上させるリーダー職も希少性が高い。給与水準は一層上がる。慢性的な人手不足が続く状況で、こうした「現場のボス」の存在価値は高まる一方である。

問題はカーブの中央だ。ここには、かつて日本型雇用システムの中心にいた「昭和型ホワイトカラー」がいる。社内調整や稟議作成、進行管理など、企業内部の定型的な調整業務を中心に担う層である。

これらはAIやRPA(Robotic Process Automation:定型業務を自動化する仕組み)、さらにはオンラインで働く海外の優秀な人材によって、低コストかつ高い水準で代替されうる。

供給は多く、需要は相対的に低下しているので、給与水準は下がっていく。年功序列によって高止まりしていた報酬が、市場原理によって急速に是正されつつあるのだ。

このようにキャリア版スマイルカーブでは、右端の知識・創造領域をリードする人材だけでなく、左端のエッセンシャルワーカーを率いるリーダーも、共に代替されにくい価値を持っている。中央の昭和型ホワイトカラーだけが、その特徴を持たず、最も代替されやすいのだ。

安定という錯覚が招く悲劇

さらに厄介なのは、この中央ゾーンに自分がいることに多くの人が気づいていない現実である。社内では評価され、安定したポジションに見えるかもしれない。

布留川勝『ニュー・エリート論』(PHP研究所)
布留川勝『ニュー・エリート論』(PHP研究所)

しかし、市場全体から見れば、その業務の多くはすでに代替可能であり、企業の方針転換や構造改革の波が来たとき、最も早く削減対象になる領域だ。

このカーブを見れば、なにをすべきかは明白である。中央ゾーンから抜け出すこと。それは、右端のような高度経営人材を目指す道か、左端のように現場でチームを束ねてサービスの価値を高める道かのどちらかである。

私は、右端への移行を推奨する。なぜなら、高度経営人材として身につける能力は、どんな業界や市場環境にも応用可能だからである。

キャリア版スマイルカーブは、変化の波に飲まれる人と波を乗りこなす人の分岐点をはっきりと描く。いま、自分が曲線のどこに立っているのかを直視することが、変化に適応する第一歩である。そしてその一歩を踏み出す意志こそが、あなたを代替されにくい存在へと変えていく。

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