言葉の限界が思考の限界
このとき私は、言葉の限界が思考の限界を決めるのだと強く思った。
おそらく彼もそんなに深く意識して言ったわけではなく、何となくの感覚で「人生の3分の2が終わった」と言ったにすぎないのだろう。
けれども「予言の自己成就」という心理学の言葉がある。
人が何かを予期したり信じたりすると、その予測や信念が、現実の行動や状況を無意識のうちに変え、最終的に予期した通りの結果が実現してしまう現象のこと。
これは、以下の3つのステップで起こる。
①予期する:「自分は成功するに違いない」あるいは「自分は失敗するだろう」と予期したり、信念を抱く
②行動の変化:その思いに沿った行動を無意識的にとってしまう(成功を信じる人は積極的に行動し、失敗を信じる人は挑戦を避ける)
③結果の実現:その行動が、当初の予期通りの結果を引き寄せる
「人生の3分の2が終わった」と言葉にすると、きっと無意識のうちにこう思うだろう。「俺の人生、あと3分の1しかない(ここから何をやったところで大したことはできない)」
こんな風に思ってしまうと、新しいチャレンジができるだろうか?
新たなことを学ぼうと思えるだろうか?
おそらくそのようなことは考えもしないか、考えたとしても行動に移すまでに至らないケースがほとんどになるのではないか。
結果的に残り3分の1の時間を挑戦することなく過ごすことになる。
人生は言葉選びが9割
この例からも分かると思うが、今風の言い方をするなら「人生は言葉選びが9割」といえるのではないか。
言葉の扱い方で未来が決まる。日々、「それは難しい」「できない」と言っている人と、「どうすればできるか」とポジティブに捉えている人の運命が同じであるはずがない。
日々、「あいつムカつく」と文句ばかりの人と、「あの人にはこんな良い点もある」と美点を見つけようとしている人の、どちらが友だちが多そうか考えてみればいい。
ふだん脳内で回している言葉で、人生はほとんど決まってしまうといっていい。
極論を言えば、脳内で回している「上位10語」が思考の枠組みを作り、選ぶ行動を決めていく。
「前倒し」「複利」「積み上げ」「信用」「信頼」「ご縁」……これらは一例であるが、たとえばそんな言葉で頭の中が埋まっていれば、未来は末広がりになるだろう。
逆に、「ウザい」「ヤバい」「ダルい」「キモい」「ムカつく」、といった言葉で世界を切り取る人の未来がどうなるかも、容易に想像がつく。
日々、どんな言葉(フィルター)を通して世界を見るかで、行く末が決まるのである。
似たような話でこんなことがあった。「アンガールズの田中卓志さんが二級建築士の資格に挑戦する」というネットニュースの記事を読んだときのことである。
何気なく記事のコメント欄を眺めていたら、「何がすごいって、この年齢で挑戦するのがすごいと思います」というコメントに、「共感した」のボタンがたくさん押されていた。

