再開発が進むJR渋谷駅周辺には、歴史スポットが数多く存在する。ノンフィクションライターの本田不二雄さんは、「豊栄(とよさか)稲荷神社には『庚申塔(こうしんとう)』と呼ばれる石塔が13基並んでいる。これは、江戸時代の渋谷で行われていた夜通しイベントの名残だ」という――。

※本稿は本田不二雄『東京異界めぐり』(駒草出版)の一部を再編集したものです。

豊栄稲荷神社入り口(写真=Rs1421/CC BY-SA 3.0/Wikimedia commons

大規模開発のはざまに残る古代の痕跡

大規模再開発中の渋谷駅とその周辺。たまにしか訪れない者には待ち合わせ場所もままならない状態(2025年11月現在)ですが、まずはJR渋谷駅の南東に位置する「金王こんのう橋広場(金王橋脇のスペース)」へ向かいます。

ここから渋谷駅の方向を見上げると、正面に渋谷スクランブルスクエア。もはや駅ビルのレベルを越えた地上47階、高さ約230メートルの威容です。向かって左には渋谷ストリーム。「クリエイティブワーカーを魅了するエリア」の触れ込みです。一転して、向かって右は昭和の風情漂う雑居ビルの裏側、そして下部には巨大な排水溝のようなトンネルが出現。渋谷川です。

この光景には、渋谷の原点と近未来(および昭和)が凝縮しています。

原点とは、約2万年前の大海退期であらわれた土地に富士山や箱根の火山灰が堆積し、そこに渋谷川やその支流がシワを刻み、谷をなした。それがはじまりのはじまりで、その後縄文時代に再び海進と海退が生じ、結果、今ある渋谷の地形ができたことを意味します。

つまり、現在のコンクリートのトンネルは、渋谷川の最終形。北は新宿御苑ふきんを泉源とし、原宿のキャットストリートを経て渋谷に至る隠田おんでん川と、北西の初台駅ふきんに発した河骨こうほね川と宇田川が合流して台地の縁を東南方向に下った流れ(いずれも現在は暗渠)が渋谷駅ふきんで合流、生まれたばかりの渋谷川が姿をあらわす。そのポイントは昔も今も変わりません。

ですから、このトンネルの奥には封印(暗渠化)された渋谷川の支流があり、渋谷の古代とつながっているのではないか……つい、そんな妄想にかられます。