「国民作家」司馬遼太郎──。彼の手によって描かれた魅力的な群像。激動期を生き抜いたさまざまな「彼」の物語、「もう一つの日本」の物語から、混迷の現代を生きる我々は何を学ぶべきか。司馬文学研究の第一人者が語る。

合理の精神を持った司馬さんから見れば、バブル経済に浮かれていた日本も非常に危ういものに映っていました。銀座の「三愛」付近の土地は、バブルで大きく値上がりして、1坪1億5000万円に達しました。絶筆となったコラム「風塵抄」(産経新聞)では、この狂乱を指して、「こんなものが、資本主義であろうはずがない」と痛烈に批判しています。

司馬さんは絶筆の10年前にも、同じ趣旨の文章を書いています。

(構成=村上 敬 撮影=市来朋久、宇佐見利明)