ニューヨーク連邦準備銀行のリポートによると、米国の家計債務は18.6兆ドルに膨らんだ。これは同機関がデータ収集を始めて以来、過去最大の水準だ。住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、クレジットカード残高のいずれもが記録的な高水準に達しており、リボ払いだけでも過去1年の急増で1.2兆ドルに達した。
生活苦と利払いの増加で、期日通りにローンを返済できないアメリカ人も増えている。延滞90日以上の「深刻な延滞」はローン残高の3%を超え、これは2008年のリーマン・ショック時以来の水準だ。学生ローンに限れば、直近の四半期だけで残高の14%超が深刻な延滞となり、同連銀の統計上最悪の結果となった。
「有権者の多くは、とにかく物事が“うまくいっている”状態を望んでいる。ガソリンや食料品を買えて、家族を養えて、子どもに明るい将来を用意できるという安心感がほしい。うまくいかない時は、責任者に不満が向けられる」と、ジョージ・ワシントン大学「政治コミュニケーション倫理プロジェクト」ディレクターのピーター・ローグは本誌に語った。
「今、多くの人が『うまくいっていない』『これからも良くならない』と思い始めている。そして責任者はトランプ大統領だと見なされている」
政権側もこうした不満の高まりを認識しており、家計の圧力を軽減する新たな政策アイデアを提示し始めている。そのひとつが、月々の支払い負担を減らす目的で導入を検討している「50年住宅ローン」だ。
しかしこの案は党内でも賛否が分かれている。「住宅の価格問題を50年ローンで解決するのは反対だ」。ジョージア州選出の共和党下院議員マージョリー・テイラー・グリーンはX(旧ツイッター)にそう投稿した。
「この政策は最終的に銀行や住宅ローン会社、住宅建設業者を利するだけで、人々は莫大な利息を払いながら、住宅ローンを完済する前に亡くなることになる」
住宅ローンの期間を従来の30年から50年に延ばすことで、月々の支払いは軽くなるが、生涯で支払う利息の総額は大幅に増加する。住宅経済の専門家たちは、30年ローンに比べ、支払い期間を20年延ばすと支払う利息総額はほぼ2倍になると指摘している。
「自動車でも、基本的には、通常より長いローン期間は避けたほうが良い」。金融サービス比較会社レンディングツリーのチーフ消費者金融アナリスト、マット・シュルツはCNNにそう語った。
「クルマは購入してすぐに価値が下がる。ローン期間が長ければ、ローン残高がクルマの価値を上回ってしまうリスクがある。それは誰にとっても望ましい状況ではない」
政府閉鎖を終わらせるつなぎ予算により、政府は1月30日まで再開される見通しだが、生活苦に対する根本的な解決策は示されておらず、中間層のトランプ支持率は下がり続ける可能性がある。2026年中間選挙での共和党の見通しにも影響を与えるかもしれない。


