Xであるホットケーキについての投稿が話題になった。仕事で失敗をした女性が、心癒やされ「泣きながら食べていた」というホットケーキだ。これは大阪・梅田の喫茶サンシャインの名物。年間約2万7000食、多いときで1日140~170食が売れる。彼女の涙が止まったのは、このホットケーキのおいしさが大きかったからかもしれない。
涙も止まるホットケーキの正体
焼きたてのホットケーキは、こんがりと色づいた2枚が重なり、熱でとろけたバターが静かにすべり落ちていく。フォークを入れると「サクッ」と軽い音。そのまま口に運べば、表面は香ばしく、中は驚くほどふわふわ。生地の素朴な風味を、バターとメープルシロップが引き立ててくれる。甘すぎず、どこか懐かしい味わいだ。
この店のホットケーキが知られるようになったのは2008年、ホットケーキを食べ歩くブロガーが、「喫茶店なのにこんな美味しいホットケーキを出す店があるなんて」と紹介したことがきっかけだ。そこから徐々に注目が集まり、2009年には情報誌『SAVVY』に取り上げられてさらに人気に。2010年にはテレビに出はじめ、NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で先代店主・橋崎光男さんの「ホットケーキを含めた仕事へのこだわり」が取り上げられると大ブレーク。ホットケーキを求める客が押し寄せるようになった。
140食すべて、注文後に「計量」から
なぜ、専門店ではなく純喫茶なのに、こんなにおいしいのか。
実はこのホットケーキ、注文が入った後に「一から手づくり」しているのだ。毎回粉の計量をして、卵、牛乳と混ぜ、フライパンで焼き上げる。タネの状態での作り置きは絶対にしない。
「昔はホットケーキって1日1食か2食しか出なかったんですよ。『もうやめようか』というギリギリのメニューでした。だからロスが出ないように1枚ずつ焼いていたんです。その頃のやり方を今もずっと続けていて。大変やけど、やっぱりこの方法が一番おいしいんですよね」と、2代目店主の橋崎卓さんは悩ましい表情で語る。
1日140食、ピークで170食が出るため、専用のフライパンは1カ月でテフロン加工が剥がれて使えなくなるそうだ。焼きムラがでないよう、一回一回「フライパンを強火で温めて、それを一回ぬれ雑巾で冷まして、温度を均一にしてから」焼くからだ。

