年を重ねても体力を維持するにはどうすればいいのか。トレーナーの澤木一貴さんは「ジョギングや筋トレなどのハードな運動から始める必要はない。毎日1分でも『体を動かす楽しい習慣』を身に付ければ、それは立派な運動だ」という――。

※本稿は、澤木一貴『体力おばけへの道 頭も体も疲れにくくなるスゴイ運動』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

高齢者のグループが公園で運動
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体力が落ちる原因は「年齢」ではない

「年齢とともに体力が落ちるのは当たり前」「もう若くないから」と、どこかであきらめていませんか? 確かに、歳を重ねれば体の変化はあります。しかし、その変化の多くは「加齢そのもの」ではなく、「不活動」によって引き起こされているというのが、最新の医学的な常識です。

つまり、年齢が上がることそのものが悪いのではなく、「動かなくなること」「運動をしなくなること」が、体力を大きく落とす真犯人なのです。

定期的に運動習慣を持つ中高年の中には、運動習慣のない若年層と比較して、体力測定などの特定の項目で優れた結果を示すことがあります。これは加齢に伴う体力低下が、適切な運動によって緩やかに保たれる可能性があるということです。さらに驚くべきことに、70代・80代でトレーニングを開始した人の中にも、数カ月で筋力・持久力・柔軟性を大きく改善できた例が数多くあります。

体力は60代以降でも伸ばすことができる

久留米大学と帝京大学が行った研究によると、週2回の膝屈伸運動(レッグエクステンション)を12週間続けた高齢者グループが、膝伸展筋力を約44%も向上させたという報告があります。

このようなデータを、私の過去の運動指導結果と照らし合わせてみると、「買い物や階段昇降が楽になった」という声が多かったことにつながってきます。

このような結果は、私たちにとって大きな希望です。体力は「若いうちにしか伸びないもの」ではありません。むしろ、中高年こそ、少しの取り組みで生活の質(QOL)が劇的に向上する“伸びしろ”を秘めています。

実際、私のジムにも、60代・70代で運動を始めた方がたくさん通っています。ある70代の女性は、「もう筋肉なんてつかないと思っていた」と言っていましたが、3カ月後には階段を軽やかに上れるようになり、「旅行が楽しくなった」と笑顔を見せてくれました。筋肉は裏切りません。やればやっただけ、必ず応えてくれます。

もちろん、20代のようなスピード感で体が変わるわけではありませんが、確実に“変わる”ということが重要です。そして一度変わり始めた体は、心も変えていきます。「もう歳だから無理」という思い込みが、「私にもまだできるんだ」という自信に変わるのです。