※本稿は、菅原道仁『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』(アスコム)の一部を再編集したものです。
やる気が出ないのは「ストレスで心が疲れている状態」
肉体的疲労を感じていなくても、気持ちが上向かず、なんとなく疲労感があってやる気が出ないときは誰にでもあると思います。人間関係に悩んでいたり、将来に対する漠然とした不安を抱いていたり、生活環境に嫌気がさしていたり、などといった原因が背景にあり、ストレスを感じて心が疲れている状態です。
私たちがふだん使用しているストレスという言葉は、もともと機械工学の用語で、「物体がゆがんだ状態」を意味します。そして、このゆがんだ状態をつくりだす要因を「ストレッサー」と呼びます。
膨らんだ風船を指で押して表面が凹んでいる状態をイメージしてみてください。風船を押している指がストレッサー、押されて風船の表面が凹んでいる状態がストレス、ということになります。よって、「ストレスの多い生活環境」という表現は間違いで、正確には「ストレッサーの多い生活環境」となるわけです。
ストレッサーが原因、ストレスがそれに対する反応――そう考えるとわかりやすいでしょう。つまり、心の疲れの元となるストレスをなくすためには、その原因となるストレッサーを取り除く必要があるということです。
本稿では、その代表的な方法=リセットする技術(回復法)を紹介していきます。
“ストレッサー”が重なるほど回復も遅れる
回復法を効果的に実践するために、まずはストレッサーに対する理解を深めていきましょう。ストレッサーには、外部環境や社会環境が要因となる「外的ストレッサー」と、個人的な感覚や生理的状況の変化が要因となる「内的ストレッサー」の2種類が存在します。
そしてさらに、外的ストレッサーは「物理的ストレッサー」と「社会的ストレッサー」に、内的ストレッサーは「心理的・情緒的ストレッサー」と「生理的・身体的ストレッサー」に、それぞれ分けることができます。
そのおもな要因の具体例を挙げていきましょう。
●物理的ストレッサー
騒音、振動、悪臭、寒暖差、混雑など
●社会的ストレッサー
人間関係、会社の部署異動、経済状況の変化など
●心理的・情緒的ストレッサー
不安、緊張、焦り、怒り、さみしさ、悲しみ、絶望など
●生理的・身体的ストレッサー
睡眠不足、体調不良、疲労、空腹、アレルギー(花粉)など
脳はこれらのストレッサーに敏感に反応します。全力で対処しようとして、大量のエネルギーを消費し、疲弊します。複数のストレッサーが重なれば重なるほど、心の疲労は増していき、回復しづらくなっていくのです。

