※本稿は、菅原道仁『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』(アスコム)の一部を再編集したものです。
“自律神経の暴走”で脳が疲れる
心身がアクティブだったり、緊張したりしているときに優位に働く交感神経と、リラックスしたり、穏やかな気持ちでいたりするときに優位に働く副交感神経。両者のバランスがとれている状態が望ましいことは前述したとおりですが、つねにフィフティフィフティの関係であることがベストというわけではありません。
仕事やスポーツに集中して取り組んでいるときは交感神経が活発であるべきですし、入浴中や就寝中は副交感神経が主導権を握ってくれていないと困ります。
問題があるのは、いずれか一方が優位な状態になったままだったり、どちらの働きも極端に弱くなった状態が続いたり、本来であれば一方が優位であるべき状況にもかかわらず、もう一方が逆に活発になってしまっていたりすることです。
自律神経の暴走――そのように表現してもいいでしょう。自律神経が暴走してしまうと、脳の疲労は加速度的に増していきます。脳が自律神経の乱れを整え、正常な状態に戻そうとして、多くの労力を費やすことになるからです。
ここで、2つの自律神経の特徴を把握しておきましょう。交感神経は、自動車に例えるならアクセルの役割で、おもに日中に優位になり、体を活動的にします。また時間帯を問わず、ストレスや緊張などによって、働きが活発になることもあります。
「副交感神経が優位な状態」が続くと無気力になる
交感神経が優位になると、血圧や心拍数が上がり、瞳孔(どうこう)が開きます。この状態が続くこと、すなわち交感神経が暴走した状態を想像してみてください。「心身ともに疲れてしまう」のを、ありありとイメージできるはずです。
一方の副交感神経は、自動車に例えるならブレーキの役割で、おもに夜間に優位になり、体を休ませてくれます。また夜間に限らず、静かな環境で休憩したりするときに、働きが高まりやすくなります。副交感神経が優位になると、血圧や心拍数が下がり、瞳孔が閉じます。
この情報だけを知ると、「体にとって良い」「心身ともに休息できる」という印象を抱くでしょう。確かにそういう面はあるのですが、ずっとこの状態が続くと無気力につながり、仕事や勉強、スポーツなどで、いざというときに最高のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。副交感神経の暴走もまた、人間にとっては困りものなのです。
脳の疲労を軽減し、心身の休息を図るためには、自律神経を暴走させないようにしなくてはなりません。また、すでに暴走してしまっている場合は、それを食いとめなければなりません。


