高知県産の新米「よさこい美人」が5kg7800円で売られていると報道されている。コメの値段はこれからどうなるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「JA農協は過去に例のない高水準の概算金を農家に提示している。この価格を維持するために自民党農林族は、政府が減反廃止などの農業改革を行えないように手を打った。市場原理を歪めるこうした構造が異常な高値を招いている」という――。
韓国・ソウル近郊のコメ農家の田んぼを視察する小泉進次郎農林水産相(左から2人目)=2025年8月10日、同国京畿道坡州
写真=時事通信フォト
韓国・ソウル近郊のコメ農家の田んぼを視察する小泉進次郎農林水産相(左から2人目)=2025年8月10日、同国京畿道坡州

コメの値段はもっと上がる

8月6日コメの値段は下がらないと指摘した(「5kg4000円」に逆戻り…小泉備蓄米がスーパーから消えた後、今年も「コメ不足」が再来するワケ)。

小泉農水相は備蓄米を特売的に安売りしただけで、これまで消費者が買ってきた「銘柄米」の価格は下がっていないからだ。それどころか、今年の高知県産「よさこい美人」が「銘柄米」の平均価格5kg4200円を大幅に上回る7800円で販売されているという報道が行われた。

異常な価格高騰の背景には、JA農協が農家に示す概算金(仮渡金)の上昇がある。

概算金は例年7~8月頃に示される。しかし、前年他の業者に集荷競争で負けたと認識した新潟、福井などのJA農協は、今年産米については作付けが始まる3月の段階でこれを農家に提示した。しかも、例年なら高いときでも玄米60kg当たり1万2000円なのに、その倍の2万4000円を提示した。これに農協の諸経費を加えるとJA農協が卸売業者に販売する価格(相対価格)は2万8000円を超える。これは26%の減産となった平成の米騒動時の2万3000円を上回る史上最高値である。

ところがいま、JA農協が農家に示している概算金は、3月時点よりも大幅に上昇し、北海道「ゆめぴりか」3万円、秋田「サキホコレ」3万2300円、山形「つや姫」3万1000円、山形「はえぬき」2万8000円、新潟「コシヒカリ」3万円などとなっている。

これからすれば、卸売業者が購入する際の価格は3万3000~5000円ほどになり、消費者が購入する精米5kgの価格は5000円を超え6000円に近い水準に跳ね上がってしまう。