もしも、山でクマと遭遇してしまったらどうすればいいのか。東京農工大学大学院の小池伸介教授は「クマが人間を攻撃するときは、パニックになっている場合が少なくない。だからこそ人間側は落ち着いて様子を観察する必要がある。焦って背を向けて走り出すのは絶対にNGだ」という――。

※本稿は、小池伸介『クマは都心に現れるのか?』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

ツキノワグマ
写真=iStock.com/naotto1
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「普通の道」を通る登山者の被害は少ない

少し前になるが2010年頃、日本クマネットワークではそれまでの人身被害を集計するというプロジェクトを実行したことがあった。これは各地に散らばっているクマによる人身被害の情報を全て集め、データを解析しようという試みだ。私は関東地方、特に南関東地方を担当した。

クマの生息数が少ない南関東地方でも、クマとの事故は確かに存在する。特に奥多摩や丹沢山系などで発生しているが、件数は少なく年間数件程度であり10年間では15件程度だった。当時の南関東地方のクマの人身被害の特徴は、基本的に山間部で発生しており、その6割から7割が通常とは異なるアクティビティをする人々が被害に遭っていた。

この通常と異なるアクティビティとは、通常の登山道をたどる登山やハイキングといった行動とは違い、あえて他者が来ないような場所を選ぶ山中の行動のことだ。

登山道を登り、山頂に行き、下りてくるという一般的な登山者へのクマによる人身被害は極めて少ない。事故のほとんどは、渓流釣り、トレイルランニング、バリエーションルート(登山道ではないルートを登る難易度の高い登山)、マウンテンバイクなど、通常とは異なる形で山に入る人々が遭遇している。これは、山菜採りやキノコ狩りで、他者に知られたくない場所へ行きがちな行動と似ていると言える。