元気に働いていたのに、心身の調子を崩していきなり休職となってしまう人がいる。早めに防ぐ方法はないのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の面談を行っている産業医の武神健之さんは「突然休職する人は、しばらく前から変化が起きていることが多い。そのサインに気づくことが大切だ」という――。
頭を抱えるビジネスパーソン
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前年に頭痛と軽度の不安症状が出ていた

こんにちは。産業医の武神です。私は産業医として、元気に働いていた人が、ちょっとしたことをきっかけに心身の調子を崩し、いきなり休職となってしまうケースをたくさんみてきました。彼・彼女らとの休職中の面談でわかったことは、ほぼ全員にそのしばらく前から体調や感情の変化があったということです。しかし、その変化のサインに気づかなかったり、対処しなかったり(できなかったり)したため不調が深刻化し、最終的にメンタル休職せざるを得ない状況に陥ってしまったのです。

そこで今月は、メンタル休職する社員の3つの前兆についてお話ししたいと思います。

ある年の春に産業医面談した30代男性のAさんは、不安障害の診断書をいきなり上司に提出し休職に入りました。初回の産業医面談で私が驚いたことに、実は前年の秋にも産業医面談をしていた方でした。

当時の記録を見ていると、その時は、頭痛と軽度の不安症状が出現し始めていましたがそれ以外の症状はなく、週末は家族サービスで気分転換をできている状態でした。頭痛に対しては、市販薬を飲んでみること、それでも効かないなら専門医を受診すること。不安症状に対しては、そのせいで眠りがおかしくなったり、日常生活への影響が出るようならば再度の産業医面談か医療受診し相談することを伝えていました。会社への開示は希望されなかったため、次回面談は必要になったら本人から申し込むことになっていました。

身体症状はわかりやすく、精神症状はわかりにくい

今回の面談でわかったことは、年末までは症状はほぼ横ばいで、市販薬で頭痛はコントロールできており、軽度の不安は続いたが日常生活に影響はなく、睡眠も医者に行くほどの状態とは思わなかった。年始から頭痛薬が効かなくなるときや、眠れない日が出るようになったが、忙しくて医療受診も産業医面談も後回しにしていたら、3月に入り全く眠れない日が出るようになってきた。そして、最近無表情になっていると心配した奥様に医療受診を勧められ、初診で休職の診断書が出たとのことでした。

人は、自覚の有無に関わらず、“いっぱい、いっぱい”になると心か体か行動にその反応が現れます。いわゆるストレス症状というものです。

このうち、本人にとって一番わかりやすいのは身体症状(不眠、食欲低下、頭痛やめまい、動悸や冷や汗など)で、わかりにくいのが精神症状(やる気が出ない、億劫、不安、イライラ、憂鬱など)。また、周囲の人がわかりやすいのは行動に出る症状(お酒やタバコの増加、遅刻や早退、会話の減少など)です。