「他社の“袋”」をノートにスクラップ
こうした裏には、現場での試行錯誤が欠かせない。営業畑から現在のチルド食品事業部に異動した綿引さんが思考を巡らせたのは、いかに多くの消費者に魚肉ソーセージを手に取ってもらうか――そのために、これまでの良さを伝えつつ、イメージを刷新することが急務だった。
「部署には、私のように営業からきた人間もいますし、工場勤務だった者もいます。共通するのは、それぞれが『魚肉ソーセージのよさをもっと伝えたい』と考えていたことです。必然的に会話が生まれ、何気ない会話のなかに新商品の開発の糸口があったりもしました。
もちろん、うまくいった話ばかりではありません。例えば餃子ソーセージ等、魚肉ソーセージに畜肉を加えたソーセージの品ぞろえを強化したり、現在とは異なる方向性を進めていたこともあります。ただそうした対話を重ねていくなかで、部署がひとつの方向性にまとまった印象はあります」
綿引さんの手元には、前任者から引き継いだというノートがある。すべてのページに、他社の魚肉ソーセージのパッケージをスクラップしており、数cmぶんはその厚みが増している。パラパラとめくるたび、パッケージのビニール素材が紙にこすれる乾いた音がした。
「これで3冊目なんです」。そう言って、綿引さんは愛おしそうに自作の研究資料に目を落とした。
「パパ、魚肉ソーセージここにあるよ」
「家族で買い物に出かけた際も、スーパーなどに立ち寄ると魚肉ソーセージのことが頭をよぎるんですよね。そして、ひとりでフラフラと魚肉ソーセージのコーナーに行ってしまう。たいてい、妻から『今どこにいるの?』と電話がかかってきます。
魚肉ソーセージは、スーパーごとに置かれている棚がわりとばらばらで、見つけるのに苦労したりするんですよね。缶詰コーナーにあったり、加工品コーナーにあったり、お肉のコーナーにあることもありますし。最近では、こどもが率先して『パパ、魚肉ソーセージここにあるよ』なんて教えてくれます」
地道な開発の裏側に、綿引さん本人の魚肉ソーセージ愛はもちろん、家族の協力が滲んでいる。
魚という素材の個性を最大限に生かし、パッケージにも気配りを感じさせる。そんな脈々と受け継がれてきた担当者の地道な努力が、結実したシリーズがある。
2017年から発売されている、「こだわり魚種」シリーズだ。
これまでの健康路線を維持しつつ、魚肉ソーセージらしからぬパッケージで目を引く商品も多い。銚子産いわし(2017年)、山陰産のどぐろ(2017年)、沖縄産いか(2024年)、鹿児島産うなぎ(2025年)などだ。「こだわり魚種シリーズ」は、次の一手を担うことが期待されている。


