なぜ“世界で活躍できる人材”が育たないのか

日本の人材の質が凋落している原因は、世界のどこに行っても活躍できる人材を育てていないためである。コンピュータの得意な領域で人間が競争するのは、将棋で藤井聡太氏と競うことぐらい大変だ。

日本は世界のどこに行っても競争できない人間ばかりつくってきたため、「IMD世界人材ランキング」で順位が落ち続けており、2023年は43位と、調査開始以来、最低水準となった(図表5)。

私がアメリカに留学したのは1960年代だが、当時、日本人の留学生は非常に多かった。MIT(マサチューセッツ工科大学)だけで年間70人ほど来ていたが、今は激減している。その理由は「日本の中で何とかしよう」という方向に向かっているからだ。

パナソニック創業者の松下幸之助は、英語がまったくできないのにもかかわらず、オランダのフィリップスに飛び込み、「提携しましょう」と交渉した。英語のできない人も、やはり日本の中に閉じ込もっていては駄目なのだ。

写真=iStock.com/metamorworks
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今の日本では、海外の人も活躍できず、日本人も海外で活躍できていない。インド人と比べればよくわかるだろう。前述したように、多くのインド人がアメリカの大会社のトップに就いている。世界のどこに行っても活躍できる人材を育ててきたからだ。

“文科省に育てられた人”は世界で通用しない

岸田首相は「世界の優秀な方々はぜひ日本に来てください」と言っているが、日本国内に世界のどこに行っても活躍できる人がたくさんいなければ、そもそも日本に来ても活躍できない。日本が変わらない限り駄目なのだ。

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ただし、日本人は元々優秀でもある。私は女子スキージャンプの髙梨沙羅選手のファンなのだが、彼女のように子どもの頃から取り組んで世界記録を更新している例もある。

ああいう科目は文科省のプログラムにはない。だから文科省で育った普通の人は世界で通用しない。

私は学生時代に通訳案内業のアルバイトをしたが、金儲けがしたいからやったのだ。学校に行かずに自分で勉強して稼ぎまくった。だから学校に行っていないのが私の特徴なのだが、自分のやりたいことに取り組んでいる事例、たとえばスポーツやアニメ、ゲームなどの世界では日本人が圧倒的に強い。

それを駄目にしているのはやはり文科省なのである。

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