日本でも「AI失業」が増える可能性
AIの利活用が進むと同時に、AIによる人員削減も急速に進むだろう。そこにも備えておかなくてはならない。
アメリカでは、TモバイルUS、ドロップボックス、IBMが人員削減や配置転換を発表しているが、これはAIを理由とする人員削減であり、2023年の1〜8月で約4000人にのぼっている(図表3)。これは入り口に過ぎず、今後何万人、何十万人という単位で人員が不要になる可能性が高い。
特に専門職(医療関係、STEM)、プロフェッショナルと言われている職種で、AI導入による雇用削減が進む可能性が高い(図表3)。日本でも、アメリカ同様、AI失業が顕在化・増加する可能性が高い。
AI時代に人間は何をすべきかというと、当然コンピュータやAIが不得意とする領域
だ(図表4)。具体的には、「答えがない」問題・仕事、EQ(心の知能指数)の領域である。
AI時代に必要なのは「右脳」の教育
そのための教育としては、中学高校も含めて、右脳を使った答えのない分野をトレーニングしていかなければならない。コンピュータが苦手なのはこの右脳的なひらめきの分野だからだ。しかし、今の日本の教育プログラムのどこを探してもそれがない。
そのことに文科省が気づくのはまだ先になるだろうから、子どもを持つ親は、こういう状況を踏まえ、子どもに対し、コンピュータにできないことを訓練したりチャンスを与えたりするべきだ。今の高校生が社会で活躍する20年後はまさにAIが“たけなわ”だと予想されるからだ。
特に知的好奇心(inquisitive mind)、すなわち“質問する力”を養い育てることである。何事もおいて常に疑問を持って質問し、データや情報を調べながら深く考え、それに基づいて自分なりの答えを導き出す訓練をしておきたい。
私がフィンランドに行ったとき、現地の幼稚園では起業家養成学校のようなことをやっていた。
子どもを八百屋に連れて行き、「このおじさんはどうやってご飯を食べているんだろう?」という質問をして、「これが売れなかったら腐ってしまうよね。そうしたら、売れないからお金が入らないよね」と幼稚園児に考えさせているのだ。
日本でも「答えはこれだ」と教えるのではなく、「果物屋さんや肉屋さんはどうやって生計を立てているのか」を本人に考えさせるように頭の構造を訓練しておけば、やがて世界で活躍できる人間になるだろう。