1985年8月12日に発生した日航機123便墜落事故から、今年は40年目を迎える。ボーイング社による修理ミスが原因だったが、同社が訴追されることはなかった。元産経新聞論説委員の木村良一さんは「捜査当局は修理ミスを見逃したとして日本航空社員を書類送検した。しかし40年がたち、新たな証言が出てきた」という。新著『日航・松尾ファイル 日本航空はジャンボ機墜落事故の加害者なのか』(徳間書店)より一部をお届けする――。

「日航が修理ミスを見逃した」新聞・テレビが批判

ボーイング社の修理ミスによって墜落事故が起きたことが明らかになると、新聞、テレビなどの報道は「日航がボーイング社の修理ミスを見逃し、見落とした」「修理ミスは日航の領収検査や定期点検で発見できたはず」と日本航空を批判し、責め立てた。

世論もその方向になびいた。群馬県警や検察庁も同様な観点から捜査に力を入れ、業務上過失致死傷罪という日航の刑事責任を立件しようと動いた。

墜落事故から4カ月後の1985年12月7日に発足した遺族による「8・12連絡会」も、翌年の4月から8月にかけて5回、日航とボーイング社、運輸省の幹部ら計12人の告訴・告発を行うなど活発な活動を繰り返していた。

もちろん、航空会社には乗客を安全に目的地まで運ぶ運航責務がある。航空法などもそう規定している。

「ボーイング社の修理ミス」が事故の原因

だが、しかし、日航ジャンボ機墜落事故は航空機メーカーであるボーイング社の犯した修理ミスに起因する。日航がパイロットの操縦ミスや天候判断の誤り、整備不良から起こした事故ではない。

「ボーイング社の修理ミス」が事故の原因
写真=iStock.com/gorodenkoff
「ボーイング社の修理ミス」が事故の原因(※写真はイメージです)

しりもち事故の修理に当たり、日航はボーイング社を高く信頼し、損傷した機体の修理をすべて任せるという委託契約を結んだ。日航は立ち会いの領収検査の際に整備士や検査員に「作業エリアに近寄り過ぎてボーイングのAOGチームの邪魔をしてはならない」という指示まで出していた。