寄付金は1兆円突破、利用者は1000万人超え

ふるさと納税の「寄付金=税金」が、2023年度に1兆円の大台を突破、利用者も1000万人を超えたことが8月初めに明らかになった。ふるさと納税の認知度は高まり、さまざまな地方自治体から肉や魚などの返礼品を受け取った読者も少なくないのではないだろうか。

記者会見する松本総務相=2024年6月25日、東京都千代田区
写真=共同通信社
記者会見する松本総務相=2024年6月25日、東京都千代田区

もっとも、「ふるさとへの貢献」「地方の活性化」という制度の本旨もそこそこに、寄付額の3割相当額の返礼品がもらえる「ネット通販」と勘違いしている人もいるかもしれない。

ふるさと納税は、市場が拡大するにつれて制度の弊害も大きくなり、今や社会問題となりつつある。中でも、返礼品の仲介サイトを運営して多額の寄付金をかすめ取る民間業者の姿勢は看過できなくなってきた。その額は寄付金総額の約20%、2000億円規模にまで膨れ上がったともいわれる。

新ルールに楽天は反対の署名活動を展開

そんな中、総務省は「ポイントを付与する仲介サイトを通じて寄付を集めることを禁止する」という新ルールを2025年10月から実施すると宣言した。ポイントをエサに集客する仲介業者にレッドカードを突きつけたのである。

突然の発表に仲介業者や仲介サイトに頼る自治体に衝撃が走った。悲鳴を上げたのが、仲介サイト最大手の「楽天ふるさと納税」を運営する楽天グループだ。三木谷浩史会長兼社長を先頭に猛反発、新ルールの撤回を求めて署名運動を始めた。

だが、制度の趣旨を置き去りにして、稼げるだけ稼ごうとするもうけ優先の仲介業者に理はない。

かねてから、筆者は、返礼品競争に明け暮れる自治体に乗じて、本来、地域に落ちるべき多額の寄付金を懐に入れてしまう仲介業者の存在を問題視してきた(参考:本サイト2023年11月28日付「得をするのは富裕層と仲介業者だけ…ふるさとが潤わない『ふるさと納税』の歪んだ構図 税金がかすめ取られる『返礼品競争』の大問題」)。

それだけに、1年後に導入される新ルールは、ふるさと納税を少しでも本来のあり方に引き戻すことが期待される。

ふるさと納税は、なぜ「官製ネット通販」になったのか

総務省によると、23年度の寄付総額は、前年度から1521億円増えて1兆1175億円(16%増)と、ついに1兆円の大台を超えた。利用者も約107万人増えて1000万2000人(12%増)に達した。

22年度の住民税の納付義務者は6400万人余なので、ざっと6人に1人が利用したことなる。この数字を見る限り、制度が発足した2008年から15年を経て、すっかり定着したようにみえる。

しかし、当初の制度設計の狙いとは裏腹に、今や「官製ネット通販」と揶揄され、さまざまな弊害が取り沙汰されるようになった。