中居正広氏の女性トラブルを発端とするフジテレビ騒動は、これからどうなるか。ジャーナリストの鮫島浩さんは「朝日新聞社長が辞任に追い込まれた2014年の騒動を機に業界全体の部数がバケツの底が抜けたように激減し、凋落した。フジテレビの騒動はテレビの終わり、オールドメディアの終わりを象徴する出来事になった」という――。
フジテレビの社屋
撮影=石塚雅人
フジテレビの社屋

フジテレビ問題で「オールドメディア」は総崩れ

フジテレビが解体的危機に陥っている。港浩一社長(72)が引責辞任を表明しても、世論の批判は終息する気配がない。港氏は何の実権も握っていない「名ばかり社長」だったことは衆目一致しているからだ。

フジテレビの最高権力者は、約40年間にわたって君臨してきた日枝久相談役(87)である。港氏をはじめ歴代社長ら経営陣は日枝氏の手駒に過ぎない。いずれも日枝氏によって取り立てられた「日枝チルドレン」である。

日枝氏は社長や会長として約30年間もフジを率い、相談役に退いた後も人事権を掌握して社長を目まぐるしく交代させ、院政を確立した。社長以下が総退陣したところで日枝氏が引退しない限り、フジテレビは変わらない。新たな「傀儡政権」に引き継がれるだけだ。

日枝氏は森喜朗元首相や安倍晋三元首相ら自民党の大物政治家と親密な関係を築いてきた。政財官界に絶大な影響力を持つテレビ業界のドンだ。新聞業界のドンだった読売新聞の渡辺恒雄氏が他界した今、マスコミ界の最後のドンといっていい。

その日枝氏の引退を求める声がフジテレビ社内からも公然とあがっている。日枝氏の去就が最大の焦点に浮上しているのは、フジだけではなく、落ち目のオールドメディア全体の将来を大きく左右するからだ。

「フジテレビは悪くはない」の声に疑問

日枝氏の去就とマスコミ業界に与える影響を分析する前に、混迷を深めるフジテレビ騒動の核心をまずは簡潔に示しておこう。『週刊文春』が第一報の重要部分を訂正して「フジテレビは悪くはない」という声がネットにみられるが、そんなことはない。フジテレビのどこに問題があるのか、改めて整理しておく必要がある。

発端はフジの被害女性が2023年6月、同局のバラエティ番組で共演した中居正広氏(52)の自宅での飲み会に誘われ、性被害を受けた疑惑だ。被害女性はその直後に上司に報告したものの、フジは中居氏から聞き取り調査さえ行わず、何事もなかったように中居氏のレギュラー番組を継続した。

被害女性は上司、編成制作局長、大多亮専務(66)を経て港浩一社長(72)にも報告されたが、「当事者2人の間で起きたきわめてセンシティブな問題」(港氏)としてコンプライアンス部署には共有せず、フジは組織的にこの疑惑をもみ消したのである。ここがフジテレビ騒動の最大のポイントだ。

『週刊文春』の同年末の報道で松本人志氏(61)の性加害疑惑が浮上した後、フジテレビは松本氏の出演を取りやめたものの、中居氏の性加害疑惑は伏せ続け、松本氏と中居氏が共演するバラエティ番組「まつもtoなかい」を「だれかtoなかい」に衣替えして中居氏の起用を続けた。