2022年~23年にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、この夏に読み直したい「2024夏のイチオシ」をお届けします――。(初公開日:2023年8月30日)
水害が起こりやすい土地には、共通する地名がある。筑波大学名誉教授の谷川彰英さんは「『鶴』と『クマ』という2つの動物は水害に関係している。鶴は『水流』という意味が、『クマ』は曲がりくねった川という意味が込められている場合が多い。鶴は『都留』、クマは『球磨』や『隈』という漢字になっている場合もある」という――。(第3回)
※本稿は、谷川彰英『全国水害地名をゆく』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
「鶴」にちなんだ地名の数々
全国に「鶴」のつく地名は数多い。市・区レベルで言えば、山形県鶴岡市、埼玉県鶴ケ島市、神奈川県横浜市鶴見区、京都府舞鶴市などである。その他小字などを含めると数え切れないほどの数になる。
そして、その多くが日本を代表する鳥「鶴」にちなんだ伝承に彩られている。例えば埼玉県の鶴ケ島には、その昔ここの広い沼地に小高い島があり、そこに男松と女松が生えており、鶴が巣篭ったことからこの名がついたという伝承がある。だが、これはあくまで伝承であって、真偽のほどはわからない。
はっきりと鶴にちなんで命名されたという地名も存在する。北海道の「鶴居村」は、釧路総合振興局管内の阿寒郡にある村だが、これは1937(昭和12)年、天然記念物タンチョウの生息・繁殖地であることから命名されたものである。村の南部は釧路湿原を中心とする湿原・湿地帯で、まさに「鶴居村」がぴったりの村である。
一方、お城の形が鶴のように優雅であったことからついた地名もある。会津若松城が「鶴ヶ城」と呼ばれたことは有名だが、地名としては「鶴」は残らなかった。京都府の舞鶴市の場合は、この地に築城された「田辺城」が「舞鶴城」と呼ばれたことにより命名されたと言われている。