2022年~23年にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、この夏に読み直したい「2024夏のイチオシ」をお届けします――。(初公開日:2023年8月28日)
過去に水害があった土地は、地名にその痕跡が残っていることが多い。筑波大学名誉教授の谷川彰英さんは「地名に『袋』や『沼』がつくところは、水害時に水がたまる危険地帯であるおそれがある。豊島区の池袋や中野区の沼袋などは典型的だ」という――。(第1回)
※本稿は、谷川彰英『全国水害地名をゆく』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。
「池袋」は水害地名なのだが…
池袋は今や東京でも指折りの大繁華街に発展しているが、それは水害地名の「池袋」に関連しているのか、その謎を解明する。
「袋」地名は全国に分布するが、その大半は土地の形状、つまり「地形」に由来する。全国の多くの都市にある「袋町」という町名は町筋が袋小路風になっていることにちなむが、「袋田」(福島県須賀川市・茨城県久慈郡大子町)、「袋原」(宮城県仙台市太白区)などのように、多くは地形が袋状になっていることによるものが圧倒的に多い。
中でもその「袋」に「池」や「沼」がつく所は低湿地帯で、水害時には水がたまる危険地帯である。「沼袋」は東京都中野区の「沼袋」以外にも岩手県下閉伊郡田野畑村に「沼袋」、岩手県滝沢市に「大釡沼袋」がある。「川」にちなんだ地名としては、宮城県大崎市に「鳴子温泉川袋」、鳥取県鳥取市に「袋河原」などがある。
さて、肝心の「池袋」である。現在の池袋駅とその周辺の繁華街には「袋状の池」などどこにも見当たらない。しかし、確かに「池袋」は存在したのである。そのミステリーを探ってみよう。