ステージ4のがん患者が悲願の歌手デビュー

振り返ると、私がストレスをためずに好きな仕事を続けてこられた要因は2つあります。

1つ目が東京を離れたこと。みんなお金を稼げるようになると都心のマンションや一戸建てに住みたがります。でも、生活費や維持費が高いから嫌な仕事をしてストレスをためることになります。老後もコストの高い生活を送るには定年後も働く必要があります。しかも楽しい仕事はお金になりません。年を重ねても、ストレスの多い嫌いな仕事を選ぶのはツラい。それを避けるために、お金を増やそうと危険な「投資」というギャンブルに手を出してしまう。余裕のある老後を夢見てギャンブルをした結果、負けて破産者になってしまっては元も子もありません。

一方で、私は20代後半で東京から50キロほど離れたトカイナカ(都会と田舎の中間地点)の一軒家で暮らしはじめました。シンクタンクを辞めて年収は半分以下になりましたが、東京に比べて生活コストが劇的に低いので、以前と変わらぬ暮らしを続けられました。それにコロナ禍以降は畑と太陽光発電を始めたので、月10万円もあれば家族全員の生活費がまかなえる。貯蓄したお金をがんの治療費に充てられたし、貯蓄があれば、お金のために嫌な仕事をする必要もなくなり、ストレスなく、好きなことに没頭できます。人生が革命的に変わるんです。

それは、個々のライフスタイルを豊かにするだけではありません。いまの日本は、東京の大企業と富裕層に富が集中する社会構造になっています。東京を離れることが、そうした構造に抵抗する術にもなりえるのです。