「俺が火をつけんかったら始まらんかったぜ」

常にクライアントに伴走してきた浅羽さんは、商品がいくら売れても、「自分の手柄だと思わない」という。ヒットの要因は企業努力、メディアの影響、SNSの口コミ、時の運など無数に挙げられる。

写真=伊藤敬生
「こどもびいる」の誕生から20年を記念して出した新聞広告。空にかざすと裏面が透けて見える。乾杯だ

浅羽さんの仕事はその前段階で、自分の仕事を「マッチ」に例える。バーベキューをやりたい人たちがいて、場所、素材は用意されている。でも、肝心なものが足りない。それは「火」だ。

「みんながマッチを忘れたって慌てている時に、僕だけがマッチを持っている感じ。バーベキューが盛り上がって成功した時に、俺が火をつけんかったら始まらんかったぜっていうのは言えるかな」

能古島の高台にある自宅からは、海が見える。浅羽さんは家族とともにしばしばその海を渡り、日本各地を旅している。

浅羽さんにとって、わかりあえる企業と組んでプランを練るのは、仲間たちと先の見えない旅をしているようなものなのかもしれない。彼が手にするマッチは火をつけるだけでなく、クライアントにとって暗闇の先を照らす灯りにもなっているはずだ。

今年1月、こどもびいる誕生20周年を記念し、友桝飲料がクラフトビールメーカーの伊勢角屋麦酒とコラボして、「おとなびいる」を限定販売した。

すでに完売したこの商品の陰にも、もちろん、浅羽さんと八智代さんがいる。

筆者撮影
こどもびいるの20周年を記念した「おとなびいる」
関連記事
体育館に「おうち」ができた…能登半島地震で大活躍する「1棟1万円」の簡易住宅を作った大学教授の使命感
京都の山奥でソフトクリームが年50万本爆売れ 道の駅年商6億で過疎村を輝かせた"元チャラい公務員"の地元愛
クジラ漁をあきらめたくない…元コンサルの社長が「国の補助金ゼロ」でも73年ぶりに捕鯨母船を新造したワケ
炎上中のプロ雀士に必ずLINEを送る…廃刊寸前だった麻雀雑誌に年間4000万円をもたらした編集長のアイデア
なぜ和歌山県で「1億円プレーヤー」の農家が増えているのか…東大教授が絶賛する「野田モデル」の画期的内容