群馬県の豆腐メーカー「相模屋食料」は、この「失われた20年」で売上高23億円から400億円に急成長している。要因のひとつは「ザクとうふ」や「うにのようなビヨンドとうふ」といった業界を騒然とさせる商品群である。同社の軌跡をまとめた『妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話』(日経BP)の発行を記念して、鳥越淳司社長の特別インタビューをお届けする――。(第3回/全3回)
鳥越淳司社長
写真=大槻純一
鳥越淳司社長

自分の思いつきを信じる

――2012年の「ザクとうふ」、最近では「うにのようなビヨンドとうふ」のBEYOND TOFUシリーズ、ひとり鍋シリーズなど、豆腐の世界を広げる魅力的な新商品はどのように生み出しているのでしょうか? 新商品を開発する時に大切にしていることを教えてください。

【鳥越】それはもう、自分の思いつきを信じて、ということですね。マーケッターがトレンドを読んで、という商品はひとつもありません。

自分が思いついたことって、自分でさえ信じられないことが多いじゃないですか。自信がないというか、人に言うだけでさえためらわれて。「こんなばかなことを言って」と思われたら嫌だし、本当に実現できるかどうか分からないことを言うのは、結構勇気のいることだと思うんです。「ザクとうふ」の時の経験が頭に浮かんでいますが(笑)、「ウニの味がするおとうふ」だって、相当ですよね。今「フォアグラ」の味がするおとうふを開発していますけど。

「うに」の香りと味わいを実現した「うにのようなビヨンドとうふ」
写真提供=相模屋食料
「うに」の香りと味わいを実現した「うにのようなビヨンドとうふ」

実現の方策とか、課題の解決策とか、最初は思いつかないかもしれませんが、話が進むとアイデアが出てくるというのは実によくあることです。「いろいろあるけれど後で考えよう、大丈夫、大丈夫」と、まず口に出せるか、出す覚悟を決められるかどうか。というところが、実は新製品開発のポイントなのかな、と思います。