日清食品冷凍の「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」が発売10周年を迎えた。2013年の発売当初は伸び悩んだものの、あるリニューアルによって成長商品になったという。マーケティングに詳しい高千穂大学の永井竜之介准教授が日清食品冷凍に話を聞いた――。

冷凍食品の工場出荷額は過去最高

日本風に味付けを変えることなく、本場そのままの味を楽しめる中国料理「ガチ中華」が人気だ。そのガチ中華ファンを唸らせ、日本で暮らす中国人たちまでも満足させる本格的な味がSNSなどで話題の冷凍食品がある。それが、日清食品冷凍の中華ブランド「日清中華」シリーズだ。「担々麺」や「ビャンビャン麺」など、一度食べたらやみつきになる味を自宅で手軽に体験できる。その人気の裏側について、日清食品冷凍の担当者に話を聞いた。

まず、日本の冷凍食品は市場全体が好調となっている。日本冷凍食品協会の発表によると、2022年の冷凍食品生産量は約160万トンで、これは、過去最高を記録した2017年とほぼ同水準だ。金額(工場出荷額)においては、前年比4%増の7639億円で、調査開始以来最高となった。

好調な冷凍食品の中でも、近年、大きく伸びているのが麺類である。日本冷凍めん協会の発表によると、2022年の冷凍麺の生産量は約20億食で、前年比12.2%増だ。このうち、過半数の11億食を「冷凍うどん」が占めており、うどんは冷凍麺の代表格といえる。一方、グングンと急成長しているのが「中華めん」である。中華めんは約3億5200万食で、前年比20.7%増、市販用に限ると前年比30.7%増という急激な伸びを見せている。「本格的な味わいを楽しめる」と支持を集める中華めんは、好調な冷凍食品の中でも、特に活気づいた成長市場になっている。

中国由来の汁なし麺「ばん麺」

話を聞いたのは、日清食品冷凍マーケティング部次長の三島健悟さんだ。三島さんによると、冷凍麺の市場は、「冷凍うどん」の誕生を皮切りに拡大していった。また、冷凍ラーメンは、太麺のちゃんぽんがメインだったが、近年では、「ラーメンらしいラーメン」の開発が進められているという。カップや袋の即席麺では、お湯を注いで食べる「汁あり麺」が主流なのに対して、冷凍ラーメンでは「汁なし麺」がここ数年で急速に伸びている。

日清食品冷凍では、汁なし麺を2種類に分類して、商品開発を行っている。1つは、日本のラーメン由来の「まぜ麺」である。まぜ麺は、麺のうまさやボリューム、味の強さを特徴としていて、メインターゲットに想定されているのは男性層だ。もう1つは、中国由来の汁なし麺「ばん麺」である。ばん麺は、唐辛子・花椒・山椒・胡麻といったスパイスや調味料の芳醇ほうじゅんな香りと旨味が特徴で、メインターゲットは女性層となっている。この後者のばん麺を中心に扱うブランドが、「日清中華」だ。

日清食品冷凍マーケティング部次長の三島健悟さん
写真=日清食品冷凍
日清食品冷凍マーケティング部次長の三島健悟さん