「大盛り=若者・男性がターゲット」を疑う必要がある

「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」のヒットにおいて、特にユニークなのは、「大盛り」が女性層から支持されている点だ。「大盛り」といえば、当然、若者・男性がターゲット。「少なめ」「小分け」なら、女性・シニアがターゲット。これらは、食品業界では常識ともいえる認識だろう。しかし、一度、疑ってみる必要がある。

同じような事例に、森永製菓のモナカアイス「バニラモナカジャンボ」がある。「ジャンボ」と名前に付けたアイスだから、当然、子供や若者から支持されていると思うだろう。しかし、じつはこの商品の購入者の4割以上は60代と70代で、シニア層からも支持を集める商品になっているのだ(2020年の販売データに基づく)。

その背景を探ってみると、棒やカップの他のアイスと比べて、「アイスが少し溶けても、周りのモナカが支えてくれるから、ゆっくり食べられる」「何か別のことをしながら片手で持って食べる『ながら食べ』にちょうどいい」「食べきれない分はモナカごと折っておいて保存しやすく、無理に食べきらなくてもいい」といったシニア層の本音が見えてきたという。しかし、こうした本音は、事前のリサーチではなかなか表に出てこないものだ。

女性層の「本音のニーズ」に応えてヒット

インタビューやアンケートでは、本音は建て前に姿を変えやすい。だから、「アイスが沢山食べたい」「コストパフォーマンスに優れたアイスを選びたい」「『ながら食べ』をしやすい方が良い」といった本音は表に出てきにくい。その代わり、「健康のためにアイスは控えている」「高価格帯のアイスを選びやすい」「食べきれる小サイズの方が良い」「行儀の悪い『ながら食べ』はしない」といった建て前が回答されやすくなる。

日清食品冷凍の「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」も、女性層の心の奥底に普段は隠されている「本音のニーズ」に応えたことが、ヒットに結びついたと考えられる。リサーチをしても本音は教えてくれないかもしれないが、じつは、人目を気にせず、自宅で食べられる冷凍食品だからこそ満たせる本音のニーズがあるはずだ。それは、例えば、食べすぎの背徳感を感じながらも、ある種のご褒美感覚で「おなか一杯、沢山食べたい」という本音のニーズがあるだろう。また、一度で食べきれなくても残った分を後でまた食べればいいと考えることによる、「1.5食~2食分になる」といった節約意識に関する本音のニーズもあるだろう。

隠れた本音のニーズを掘り起こすことで「冷凍 日清中華 汁なし担々麺 大盛り」はヒット商品に成長した。さらにそのヒットによって、ブランド内の他の商品も試してみてハマる消費者が増えていく好循環ができ、「日清中華」はブランド全体として右肩上がりの成長を進めることに成功している。