メインの販路が食品スーパーに偏りやすい
ただし、「冷凍ラーメン」という商品ジャンルそのものについて、一度も食べたことがない人や、食べたことはあってもまだ食習慣として定着まではしていない人がまだまだ多いことは確かである。そのため、冷凍ラーメン全般にも、「日清中華」ブランドにも共通する大きな課題となるのが、「もっと知ってもらう」と「試しに食べてもらう」だ。
冷凍食品は、メインの販路が食品スーパーに偏りやすい。冷凍食品売り場スペースも、近年広がってきているとはいえ、まだまだ狭く制限されている。「日清中華」は、2021年にテレビCMを展開するなど、認知の拡大に努めているが、商品・ブランドが消費者と出会うコンタクトポイントは即席麺などと比べると多いとはいえない。
「こんなに簡単」「こんなに美味しい」を伝えて、手に取って体験してもらえなければ、どれだけ商品力が高くても、その効果は発揮されない。特に「日清中華」は、「ビャンビャン麺」など、日本では馴染みの薄い中華メニューを商品化することが珍しくない。そのため、店頭での出会いが制限されている以上、SNSを中心としたオンラインでの接点を増やしていく取り組みの重要性が高くなる。ターゲットに合わせたSNSマーケティングやインフルエンサーの活用などを、より積極展開していけるかが課題になるだろう。
冷凍食品には先入観や思い込みがまだまだ残る
コロナ禍によって、自宅での食事機会の増加に伴い、冷凍食品へのニーズが拡大し、これまで冷凍商品を食べてこなかった人が手軽さと美味しさに気づくことが増えた。日本冷凍食品協会の調査では、「コロナ禍をきっかけに冷凍食品の利用を始めた」という人が、男女ともに回答者の約10%にのぼり、特に若い年代ほど、その割合は高くなっている。また、冷凍食品を利用することが増えた理由として、最多の回答は「手軽さ」だが、大きく伸びている回答は「美味しさ」になっている。
冷凍食品というジャンル全体が伸びていて、なおかつガチ中華ファンが増えている現在は、「日清中華」にとって、さらなる成長を狙う大きなチャンスといえる。そのチャンスを活かすには、「冷凍なのに、意外と美味しい」ではなく、「冷凍だから、こんなに美味しい」「冷凍だから、この味を実現できた」という商品の開発と、商品情報の発信に注力することが効果的となる。未経験や、先入観・思い込みがまだ色濃く残る冷凍食品だからこそ、商品力とプロモーション力で消費者を説得し、納得させることができれば、大きな驚きと感動を体験させて、ファンに変えることが狙えるだろう。
【参考文献】
・日本冷凍食品協会「令和4年(1~12月)の冷凍食品国内生産」
・&table by 大阪王将「冷凍めんは美味しい! 年間20億食!!もはや「国民食」というはなし」2023年4月20日
・一般社団法人 日本冷凍食品協会「全国の25歳以上の男女1250人に聞く“冷凍食品の利用状況”実態調査結果について」2022年4月
・日清食品グループ「日清中華」
・日経XTREND「森永のバニラモナカジャンボがシニアに人気 チョコ“耳”の大改革」2021年5月26日