サントリー食品インターナショナルの法人向け新サービス「社長のおごり自販機」の設置が増えている。社員が2人そろって社員証などをかざすと、「社長のおごり」で飲み物が出てくるユニークな自販機だ。なぜ人気を集めているのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。

『社長のおごり自販機』とはどんな自販機なのか

自動販売機の中でも設置台数が多い「清涼飲料の自動販売機」は全国に200万台以上あり、国内なら大都市でも地方の市町村でも見かける。オフィスに設置する会社も多いが、全体の設置台数は少しずつ減っている。

とはいえ巨大市場なので、メーカー各社は新たな付加価値をつけて訴求する。

そのひとつが、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)が手がける「社長のおごり自販機」だ。2021年10月から首都圏限定で事業展開を行い、翌年5月から全国展開をスタート。スタート2年で360社が導入した(2023年10月末時点)。

ユニークなネーミングだが、どんな内容なのか。同社に話を聞いた。

支払うのは「社長」ではない

「『社長のおごり自販機』とは、専用部分に2人でICカード式の社員証などをタッチして10秒以内に欲しい飲料をそれぞれ選ぶと、無料になる特別な自販機です。開発段階で、利用者が『社長、ゴチになります』と口にしたことがきかっけで、このネーミングとなりました」

サントリーの松本俊さん(VM事業本部 マーケティング部)はこう説明する。

一般の飲料自販機と違うのは、導入先が支払うのは「社長のおごり自販機」で利用された飲料代のみ。このほかに、設置スペースの提供、電気代などの稼働費用を負担するだけですむ。

飲料代を支払うのは、正確に言えば「社長」ではなく、企業の福利厚生であることが多い。名称も相手先の希望で変えることができ、医療機関が「理事長のおごり自販機」、空港運営会社が「ツナガル自販機」とした例がある。

ANAエアポートサービスでの使用例。「社長」ではなく「ツナガル自販機」になっている
画像=サントリー提供
ANAエアポートサービスでの使用例。「社長」ではなく「ツナガル自販機」になっている