アイスの王様、ハーゲンダッツの「クリスピーサンド」が大ヒットしたのはなぜなのか。高千穂大学の永井竜之介准教授は「常識や思い込みを取り払って、アイスとタコスの組み合わせに挑戦したことでクリスピーサンドのようなヒットが生み出された」という――。
ハーゲンダッツの看板
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ハーゲンダッツの大ヒット商品「クリスピーサンド」

1961年、「大人も満足できるアイスクリーム」としてニューヨークで生まれたハーゲンダッツは、いまや世界中で愛される「高級アイスの王様」だ。そのハーゲンダッツの中でも、日本で「新しいアイス」として開発されて人気を集め、その後、世界に販売を拡大したヒット商品が「クリスピーサンド」である。このクリスピーサンドは、じつはアイスとメキシコ料理の「タコス」を組み合わせるという斬新な発想から誕生した。

ハーゲンダッツにとって特別な場所である日本

ハーゲンダッツにとって、日本は特別な場所といえる。その理由のひとつは、小さなミニカップが人気を集める点だ。海外ではファミリー向けの大容量サイズの販売が主流なのに対して、個人向けのミニカップが飛ぶように売れる日本は、世界の中でも特別な市場である。

もうひとつの理由は、日本オリジナルのヒット商品が次々に誕生する点にある。例えば、アイスとやわらかなモチが組み合わされた「華もち」シリーズは、日本国内のハーゲンダッツ史上、最も人気となった大ヒット商品だ。これは、通常は冷凍すると硬くなってしまうモチを、人口添加物を使わずにちょうどいいやわらかさになるように2年かけて開発した、日本オリジナル商品である。

たてた抹茶
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現在では定番の「グリーンティー(抹茶)」の味も、日本オリジナルの新フレーバーとして開発された。企画段階ではアメリカの本部から反対されたが、彼らを京都の茶室に招いて抹茶の美味しさを体感してもらうなどして説得し、苦労の末に商品化した。その後、日本国内だけでなく、世界でも販売されるようになった人気フレーバーだ。

そんな日本オリジナルのヒット商品の中でも、「新しいアイス」として7年かけて開発されたのが、2001年に発売された「クリスピーサンド」である。クリスピーサンドは、なめらかなアイスクリーム、パリパリ食感のチョコレートコーティング、そしてアイスを挟んだサクサク食感のウエハースという3層構造によって新たな美味しさを実現した商品だ。これは、もともと、「片手で食べられて、棒アイスや、モナカやクッキーで挟むような既存のアイスとは異なる、新しい驚きのある商品」について検討するなかで、斬新な組み合わせの発想からスタートした。