思いつきで試すことで「新しい何か」に出会える
このハーゲンダッツ「クリスピーサンド」の成功は、ヒット商品を生み出すために有効なふたつのヒントを教えてくれる。ヒントのひとつ目は、水平思考(ラテラル・シンキング)だ。水平思考とは、「組み合わせ」「置き換え」「逆転」「強調」「除去」「並べ替え」など、あえてロジックから外れて、「新しい何か」を探すための非論理的な発想法である。
一見無関係なAとBを新たに組み合わせてみるとどうなるか。商品やサービス、ビジネスモデルの一部を別の何かで置き換えてみるとどうか。弱みを強みにしたり、機能を逆にしたり、上下左右を反対にしたり、といった逆転の発想をしてみるとどうなるか。すでに持っている強みや特長をさらに強調してみてはどうか。弱みや課題は、いっそのこと商品から削除してみたらどうなるか。順序の並べ替えは、どんな変化を生み出すか。
クリスピーサンドは、開発担当者が偶然に訪れたメキシコ料理店で思いついた「アイスとタコスを組み合わせてみる」アイデアから誕生した。このように、「なぜそうするのか」というロジックはいったん置いておいて、思いつきで試してみることによって、ロジックだけでは辿り着けない「新しい何か」に出会える可能性が生まれる。商品開発のとき、「いつものやり方」で行き詰まったら、一度発想を飛ばしてみて、理屈や前例から外れた新発想から思いもよらない新発見を探してみるといい。
イノベーションは革新的なものだけじゃない
もうひとつのヒントは、「新しい組み合わせ」の概念だ。新しい価値を創って広めることを「イノベーション」と呼び、多くの企業がこのイノベーションの創出を目指している。イノベーションというと0から1を生み出すような革新的なものだけが該当するように誤解されやすいが、じつはイノベーションは「新しい組み合わせ」と定義されている概念である。
世の中のイノベーションの大半は、0から1ではなく、新しい組み合わせによって創られたものだ。アイスとタコスの組み合わせから「新しいアイス」を実現したクリスピーサンドのように、常識や思い込みを取り払って、新しい組み合わせに挑戦することで、現状を打開するヒットを生み出すチャンスが生まれてくる。