※本稿は、白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
逆境に苦しむスーパーの「駆け込み寺」に
「うちもグループに入れてもらえないだろうか」――。
収益環境が厳しくなる中で、スーパーマーケットの駆け込み寺のような存在がある。北海道と北東北を地盤とするアークスの横山清社長に寄せられるM&A案件が日増しに増えている。
アークスは北海道のラルズと福原が2002年11月に経営統合したのが始まり。その後、北海道のふじ(現・道北アークス)や札幌東急ストア(現・東光ストア)などがグループ入りしたほか、津軽海峡を渡って青森県のユニバース、岩手のジョイス(現・ベルジョイス)の東北勢が加わっている。
スーパーマーケットは全国にざっと2万店ある。食べなければ生きていけない人間の胃袋を相手にしているため景気に左右されにくい業界でもある。新型コロナウイルスの感染拡大で外食や百貨店、観光レジャーが大打撃を受ける一方、スーパーマーケットは家庭内での食事機会が増えて大きな恩恵を享受した。
10月までですでに12件、倒産が増えている
しかし、行動規制がなくなり消費者の日常が徐々に正常化して外食需要が回復。さらに食品の相次ぐ値上げによる買い控え、電気料金の高騰などでスーパーマーケットの収益環境に逆風が吹き始めた。加えて急速に進む少子高齢化・人口減少は、特に地方のスーパーマーケットの存立基盤を脅かす。
実際、倒産も増えている。「行動制限緩和に加え、最近の相次ぐ食品値上げにより徐々に厳しい運営を強いられるスーパーが増加してきた。特に22年3月にまん延防止等重点措置が解除されてから、スーパーの倒産(負債1000万円以上の法的整理)は増加しており、4~10月までの累計で12件と、21年度の年間13件にすでに肉薄している」(日経産業新聞2022年11月24日付「苦境の地場スーパー、倒産増加 値上げ逆風、地方で進む優勝劣敗(企業信用調査マンの目)」)という。