資本力ありきの買収は成功しない

横山社長はM&Aを「Mind & Agreement(心と意見の一致)」と意訳。基本的に、同社は資本力を背景に企業を買収するのではなく、アークスの精神に共感し自ら望んで傘下入りする企業が現れるのを待つ。だから入札によって買収金額が吊り上ることもなく、良好な条件で企業を傘下に収めることができる。「待ち」の姿勢にもかかわらず、全国スーパーマーケット協会会長やシジシージャパン副会長を務める横山社長のもとを訪れる企業は後を絶たない。

アークスの規模拡大は1997年6月に解禁された純粋持ち株会社の可能性を、横山社長がいち早く気付いた点にあった。中央集権によって成果の出やすい分野(システム開発など)は持ち株会社、地域ごとに対応すべき分野(商品政策、売り場づくりなど)は事業会社――という形で「課題の分離」を明確化し、トレードオフになりかねない事態を回避させている。

アークス店内
撮影=本田匡
アークス店内

アークスグループ各社は毎年度末に、次年度の売上高や利益の目標をそれぞれ定め、アークスに提出する。経済環境や地域ごとの市場規模を踏まえながら、業績目標が過大ではないか、さらなる成長を目指す目標になっているかなどを精査し、アークスの取締役会で決議。各社はそれを基に経営し、数値目標に対して責任を負う。月ごとの売上高などの経営情報は定期的にグループで共有し、それぞれがライバル意識を高めて切磋琢磨せっさたくまする。

ノウハウの横展開、競争で売り上げアップ

例えば、札幌市中央区のアークス本社近くで、ラルズと東光ストアが300メートルの距離で競い合う。北海道旭川市に本社を置く、ふじ(現道北アークス)が既存店売上高を40カ月近く伸ばし続けたことにグループ各社が刺激を受けるといった具合だ。

また、ラルズが「生活防衛価」と銘打って、買いやすい価格で欠品のない販売をめざした取り組み(2020年に2000品目から再スタート)、いわゆるEDLP(エブリデーロープライス)もグループ各社に横展開する。

統合前には岩手のベルプラス(現ベルジョイス)が「一物三価」のコンセプトを打ち出した「ビッグハウス」業態をラルズが手掛けたり、ビッグハウスを進化させた「スーパーアークス」業態もラルズだけではなく、道北アークスなどで展開したりしている。